国会議員が得る「お金」がどれほどか知ってますか 文書通信交通滞在費の問題は継続して議論が必要

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これらの情報を比較すると、アメリカが突出しているように見えますが、すべて使途明細書の提出がなければ1セントも支払いがされない後払い方式です。アメリカは政党に依存しない個人活動が主流だからです。欧州は政党・会派中心ですが日本もそれに近いと言えます。

毎回先延ばしになる議員特権議論

2021年10月31日の衆議院選挙後に「満額」が振り込まれたことにより文書通信交通滞在費をめぐる問題は、連日メディアで報道されました。しかし、「使途の明確化や情報公開」など重要な要点には触れられずに先送りされました。与野党ともに「日割り」にするだけで決着をつけようとする姿勢が強く見受けられました。継続した議論が求められます。

前の国会で各党は「使途公開」を口にしていました。ところが成立したのは当選した月の支給額を「日割り計算」にする改正だけです。使途公表や国庫返納はなんら盛り込まれていません。さらに、文書通信交通滞在費から調査研究広報滞在費に費目が変更されただけでした。

その後、JR無料パスの違法使用、パパ活疑惑などがあり、国民からは「議員特権を廃止すべき」という厳しい声が上がりました。国民の血税で活動している以上、国会議員にかかる諸費については透明性を持たせる必要があります。

しかし、政治家は自らが当選に有利になることでないかぎり前向きには議論しません。政治システムを変える法案を提出することもありません。当然のことながら不利になるシステムに変更されることもありません。実現させようなどと思っていないからでしょう。

国会議員の本務は、国会で政策を議論し、必要な法律を策定することです。選挙区のお祭りや盆踊りに顔を出したり、運動会に参加したりすることが本筋ではないのです。

議員は国の代表ですから、相応の報酬があることはもちろん理解できます。しかし、税金によって支払われる以上、議員の仕事に見合うかどうかを国民1人ひとりが注視しなければなりません。参議院選挙後の臨時国会は8月3日に召集されます。

尾藤 克之 コラムニスト、作家、著述家

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びとう かつゆき / Katsuyuki Bito

東京都出身。議員秘書、大手コンサルティングファームで、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎元首相夫人)を運営しライフワークとしている。NHK、民放のTV出演、協力多数。コラムニストとしても、「JBpress」朝日新聞「telling,」「オトナンサー」「アゴラ」「J-CASTニュース」で執筆中。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)、『即効! 成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)など著書多数。埼玉大学大学院博士課程前期修了。経営学修士、経済学修士。

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