「日本でネットはテレビの脅威にならない」 氏家齊一郎・日本テレビ会長に聞く

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――視聴率ということでは、BSが受像可能なテレビが増えていく中でも、視聴率の分母にBSを入れていない。視聴率を同じ土俵で計算するべきでは?

BSへの接触率は確かに伸びている。しかし現在のところ、BSのスポット料金、タイム料金は地上波の10分の1の規模にもなっていない。地上波とBSを同列で扱うのは、まだ無理がある。

とはいえ、いつまでも別々でいいのか、という議論はある。もうそろそろ、地方波、BSで一緒に視聴率を計測するようなことはやらないといけない。ただ、そうしたシステムを整備するには何十億円というカネがかかる。それを負担するのは、結局テレビ局になってしまうので、なかなか動けない。

――しかも今年10月、BSのチャンネル数が増えます。

メディアが増えたり、チャンネル数が増えたりすることで競争が激しくなる、とは思わない。先ほども言ったように、コンテンツの中身が問題。チャンネル数がいくら増えたところで、脅威にはならない。

追い込まれなければ再編は起こらない

――日本テレビは給与制度を大きく変更しました。その狙いは?

新しい給与制度が意味するところは、成果主義だ。日本経済はどうしようもなくのたうち回っている。労働法規が厳しすぎて、流動性がほとんどない。それが日本経済の最大の弱みで、その基本は終身雇用だ。しかし、終身雇用は日本社会の、経済を超えた一つの美風だろう。

この美風を守っていくとどういうことになるか。今までは、終身雇用プラス年功序列だったが、年功序列は止めるしかない。終身雇用を取るならば、年功序列はもうやれない。成果主義を入れて、優秀な人材には今までの倍ぐらいのカネを出してもいい。でも残念ながらダメな人は、初任給プラスアルファぐらいで、定年までやっていただくことになる。

――系列内には非常に高い給与水準を維持している局もあります。

キー局は自分のコンテンツを流してもらう対価として電波料を支払い、地方局の経営を支えている。これも社会の美風だと思ってやるよりしょうがない。

しかし、経済的には大きなマイナスであり、いつまでも続けることはできないだろう。経営が悪化している地方局も多く、系列内で県域を越えた経営統合が進んでいくことは間違いない。

――そうした再編はキー局が主導するのでしょうか。

厳しくなることがわかってはいても、予防的な形で再編を進めることはできないと思う。その地域の中で、音を上げるところが出てきて、それをどうやって助けるか、ということで議論が始まるはず。わかってはいても、なかなか戦略的な再編はできない。それが日本という国だ。

(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2011年2月19日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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