手厚い金融危機対応が社会の「日銀依存」を助長か 危機と日銀、セックスと資本主義など書評8冊

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[Book Review 今週のラインナップ]

・『最後の防衛線 危機と日本銀行』

・『あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれない』

・『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』

・『僕の歩き遍路 四国八十八ヶ所巡り』

[新書紹介 3分で4冊!サミングアップ]

・『ドリフターズとその時代』

・『いのちの科学の最前線』

・『過剰可視化社会』

・『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』

『最後の防衛線 危機と日本銀行』中曽 宏 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

中央銀行には物価安定と並んで、金融システムの安定という重要な目的がある。それなしには物価安定も望めない。むしろ、中央銀行制度が整備され始めた19世紀後半は、金融危機での「最後の貸し手」として流動性を供給しシステムを守ることが最重要と考えられた。

2つの危機が日銀を鍛える 読み応え十分の回顧録

本書は、1990年代末の日本の金融危機と2000年代末の国際金融危機で、金融システム安定のために最前線で指揮を執った前日銀副総裁の回顧録だ。在職中、机上には「自分たちが最後の防衛線を担っていることを常に自覚せよ」と書いた紙を置き、自らの使命を確認した。大部であり、読み応え十分な1冊だ。

不良債権問題の経緯は、すでに多くの研究書が明らかにしている。あれほどの巨大バブル崩壊、しかも金融機関の破綻処理制度が未整備な中にもかかわらず、社会の転覆が避けられたのは不幸中の幸いと評者は長く考えてきた。その陰には、本書が克明に描く現場の人々の奮闘が存在した。

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