元駿台人気講師が伝授「話し方で集中力が一変する」オンライン授業のコツ 対面と同じ方法では信頼関係の構築はできない

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新型コロナウイルスの感染拡大で、企業だけではなく教育現場にもオンライン授業が広まった。小・中学校では、不登校支援などで今もオンライン授業を活用する学校があるほか、大学や塾においてはオンライン授業はすっかり定着したといってもいいだろう。だが、その技術的な知識やノウハウについて、体系立てて教えているところは残念ながら少ない。ここでは、元駿台予備学校の人気講師で、数百時間のオンライン授業を実践してきた教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志氏に、オンライン授業をうまく進めるコツを聞いた。

「オンラインとオフラインで話し方を変えなくちゃいけないことは、何となくわかっているんだけど、実際どこから何をどう変えていけばいいんだろう……」

新型コロナをきっかけに、企業や行政でのオンライン会議だけでなく、学校でもオンライン授業が加速的に増えました。オンライン授業では、主にインターネットに接続しながら、デジタルデバイスを用いて画面越しに生徒が動画を視聴します。

授業動画の形態は大きく2つに分かれます。リアルタイムで配信される「ライブ型」と、録画したものを配信する「オンデマンド型」です。この2つは生徒と教師、あるいは生徒同士のインタラクション(交流)の有無などの違いはありますが、今回はどちらでも活用できるオンライン授業での「効果的な話し方」についてお話しします。

私自身は、2007年に新卒で駿台予備学校という大学受験専門の予備校に入社し、10年間、化学科の講師として登壇してきました。現在は独立し、大学受験専門塾「THE☆WorkShop(ワークショップ)」を経営しています。

また、私塾での登壇を含め、09年ごろから現在までの13年間、数百時間のオンライン授業を実践してきました。さらに18年には東京大学大学院に入学し、学習環境や認知科学といった視点でオンライン授業について徹底的に研究してきました。ここでは、そういった現場での実務経験や研究での知見を踏まえ、お話ししていきます。

オンラインで話すときにすべき、たった1つのこと

オンラインとオフラインの話し方の違いで重要なのは、オンラインでは「相手を置き去りにした話し方になりがち」ということです。相手を置き去りにした結果、わかりにくい説明になったり、相手が自分の話に集中してくれなかったり、信頼してもらえなかったりします。

通常、教室や会議室といった空間を共有している人たちの間には、心理学用語でいう「ラポール」が形成されます。

「ラポール」とは、臨場感や一体感といったもので、私の知る最前線で活躍している予備校講師たちは、この「ラポール」をとくに重要視しています。教えている「場」の空気感をコントロールし、「ラポール」を形成できることがトップ講師の必須スキルともいえます。

そして、オンライン講義での最大の問題の1つが、実はこの「ラポール」です。オンラインでは話し手と聴き手がいる空間が分断されているため、「ラポール」が形成されにくくなってしまうのです。つまり、オンラインでの画面越しの講義だと、話し手と聴き手の物理的な距離感から精神的な距離感も生まれてしまうというわけです。

このような視点から、オンラインでの話し方で狙うべきポイントは、「信頼関係を意識的に構築する」です。詳しく説明していきましょう。

大手予備校の「重鎮」ですら緊張する授業とは

突然ですが、予備校講師が年間の講義の中で最も力を入れる日をご存じでしょうか? それは「初回講義」です。大ベテランであっても、若手であっても、生徒とのファーストコンタクトの回を最も重要視します。

私が駿台に勤めていたときに「重鎮」と呼ばれ、伝説にもなっているある講師に、こんな話を聞いたことがあります。

「○○先生、先生のような大ベテランの方でも緊張する講義はあるのですか?」

そう質問すると、

「基本、緊張することはないのだけれど、初回講義だけは、いまだに緊張するなぁ」

このように回答されていました。

初回講義は教育学では「授業開き」とも呼ばれていますが、その最大の目的の1つが生徒との「信頼関係の構築」なのです。なぜなら、相手が自分の話を聞き入れるためには信頼関係が必要不可欠だからです。授業や会議などで「何を話すか」も重要ですが、信頼関係の構築の初期段階では、「誰が話すか」のほうが重要になります。

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