記事の目次
教育現場でもメールやチャットの活用が進む
オンライン授業、実施後に継続しない傾向
25.3%の児童・生徒が「オンライン授業は受けたくない」
予習・復習やペーパーレス化で活用が進む
【無料DL】調査データの詳細データをプレゼント
【調査概要】教員関係者意識調査/保護者・お子さんに関する意識調査

教育現場でもメールやチャットの活用が進む

まずはIT環境の整備状況に関して確認してみよう。教員を対象に勤務する教育現場のIT環境の状況を聞いた設問では、パソコンやタブレットのデバイスやWi-Fiといったネットワーク環境が整ったことはもちろん、実際に運用が広がっていることがわかる。

前回の2021年6月の調査では、IT環境が整備され「連絡はビジネスメールアドレス、チャットなどでやりとりをしている」という回答が34.5%だったが、最新調査では41%まで上昇。「IT環境についてすべて整備されており、今後のプログラミング研修などにもすべて対応」との回答と合わせると前回の39%から47.7%まで数値を伸ばした。

ちなみに、「IT環境について整備されていない」「あまり整備されていない」とした回答は初回調査の20年5月には32.8%もあったが、最新調査では14.8%にまで減少している。

ご自身が働いている教育現場のIT環境について(教員600名回答)

オンライン授業、実施後に継続しない傾向

IT環境が整った一方で、オンライン授業になると実施状況は広がっていない。前回調査では、「オンライン授業を実施したことはないが、検討している」が46.5%と最も多かったが、最新調査では31.7%に減少。

代わって「オンライン授業をしたことがあるが、現在はしていない」が前回では16.8%であったのに対し、今回は33.8%と最も多い回答になっている。コロナ禍などの影響により、一度はオンライン授業を行ったものの継続してオンライン授業には取り組んでいない傾向が見てとれる。

21年12月時点での調査のため、その時点では学校は感染状況が落ち着いていたことから、「オンライン授業をしたことがあるが、現在はしていない」の回答が多かった要因ともいえる。

オンライン授業のご経験について(教員600名回答)

今回オンライン授業を経験した教員に不満やストレスを感じた内容を聞いた設問では、「コミュニケーションがうまくとれない」45.2%の回答が最も多く、「生徒が寝ている・内職などで聞いているかどうかよくわからない」31.0%の回答も多かった。

オンラインでは、双方向のやり取りができない点に不満やストレスがかかっていることがわかる。

もちろん、機器の操作やインターネット回線にまつわる不満や不慣れさも課題としてある。「教員側、生徒側のインターネット回線が不満である」とした回答は32.2%、「機器をうまく操作できず、円滑に進まない」も31.8%に上った。

オンライン授業をしたことがある方に聞いた、授業するにあたり不満・ストレスに感じたこと(教員600名回答)

上記のような結果とも連動し、「オンライン授業の今後の意向」を聞いた設問では、あまり積極的な姿勢は見られない。教員における「オンライン授業はやりたくない」との回答は31.7%となり、「オンライン授業はなるべくやりたくないが場合によって行う」は47.3%にもなる。

オンライン授業を未だにしたことがない割合が半数以上おり、またオンライン授業はやりたくない、なるべくやりたくないと回答した割合が約7割と、全体的に後ろ向きな傾向がみられる。

あくまでもオンライン授業はコロナ禍などリアルでの授業が実施できない不測の事態のためのものと認識されているようだ。

22年1月からオミクロン株の新型コロナウイルス感染数は急激に増加し、現在学校における感染も増えている。オンライン授業を実施しなければならない局面があるかもしれないが、そのときうまく実施できるのだろうか。

各学校のITの環境は以前と比べ整いつつあるが学校の方針や教員のスキルはどうか。普段からオンライン授業への前向きな意識や取り組みがあるか否かで、こうした局面の際に真価が問われることになるだろう。

オンライン授業の今後の意向(教員600名回答)

25.3%の児童・生徒が「オンライン授業は受けたくない」

では、授業を受ける側の児童・生徒や保護者は「オンライン授業」に関してどのように感じているのだろうか?

まずは、保護者の回答を確認すると、積極的にオンライン授業を希望する回答は少なく「オンライン授業をやめてほしい」16.7%、「なるべく受けさせたくないが場合によっては受ける」50.7%と否定的な意見が7割近くに上っている。なぜオンライン授業に肯定的ではないのか?

自由記述の中に「家で設定などの面倒を見なければいけない」「通信環境を整えなければならない」など、機器やネットワーク整備の面で保護者が授業のサポートをしなければならず、負担がかかるという意見が散見された。

学校のオンライン授業について(小中高の子供を持つ保護者600名回答)

では、児童・生徒の反応はどうだろうか? 同じくオンライン授業に関しての設問には25.3%が「オンライン授業は受けたくない」と回答。「オンライン授業はなるべく受けたくないが、場合によっては受ける」が44.3%と、こちらもほぼ7割がオンライン授業に積極的ではない。

自由回答を見ると感染リスクが減ることへの評価はあるものの、「わからないところが聞きにくい」といったコミュニケーションの取りにくさを挙げる意見や「家での授業はけじめがつけにくく、ダラダラしてしまった」など集中できないとする意見が多くみられた。そして、何よりも「友人と会えない」ことに対する不満や不安が多くコメントされている。

学校のオンライン授業について(小中高の児童・生徒600名回答)

予習・復習やペーパーレス化で活用が進む

「オンライン授業」の対応は足踏み状態といえるが、授業のデジタル化という点では、PCやタブレットの活用が進んでいることもうかがえる。

配布されたデバイスがどのように授業で活用されているかを聞いた設問では、「活用していない」と答えたのはわずか21.8%のみで、残りの8割程度はなんらかの形で使用している。いちばん多い利用方法としては、33.7%が回答した「一部の予習・復習での使用」だ。次に多かった回答は「印刷物の配布や板書とPC・タブレットの使用が半々」の19.2%であった。

PCあるいはタブレットが学校側から配布されていると思いますが、授業で活用されているか(小中高の児童・生徒600名回答)

PCやタブレットが配布されてのよしあしを聞いた自由回答では「わからないことはすぐ調べられる」「機器の操作を覚えられた」「プリントがなくなったので、管理がしやすくなった」など肯定的な評価も数多く見受けられた。効率化やペーパーレスによる管理の手間の軽減。

また、先生とのやり取りをオンライン上で行うため、スピード感が出るという評価もあった。評価できない点としては、「勉強に関係ないゲームや動画を見てしまった」「視力が悪くなった」「毎日学校から持ち帰りをしているので重い」など運用上の問題が目立っていた。

今回の調査を見ると「オンライン授業」は、教員、保護者、生徒のどの立場からも21年12月時点での調査ではあまり歓迎されていないことがわかった。授業としての評価のみならず、友人とのコミュニケーションといった学生生活そのものが思うようにいかない不満も含まれているように感じられる。

教員の方々には注目する用語について毎回質問しているが、最新調査では「SDGs」のワードの注目度が上がっている。こうした「SDGs」といった社会課題を学び考える際にはそれこそオンライン授業は役立つだろう。

グローバルな問題であるだけに、海外と意見交換をしたり、多岐にわたる課題に関わる人々とつなぐことで児童・生徒たちの学びを深めることができる。

教育現場でも休校になるかならないかといった判断基準でなく、適材適所のICT活用を普段から模索していけたら、学びを深めることや効率化などメリットを享受することにつながるはずだ。もちろん、そのためには忙殺される教員の方々のサポートもしっかりと考えていく必要があるだろう。

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【調査概要】教員関係者意識調査/保護者・お子さんに関する意識調査

教員関係者意識調査 調査日:2021年12月17日
対象:小学校教員300名、中学・高校教員300名
対象エリア:全国
保護者・お子さんに関する意識調査 調査日:2021年12月17日
対象:小学生のお子さんを持つ保護者300名 中学・高校生のお子さんを持つ保護者300名
(同調査の中で小学生300名、中高生300名の児童・生徒にも調査)
対象エリア:全国

 

(文:福島朋子)

■過去調査記事■

2021年6月調査
https://toyokeizai.net/articles/-/435643
https://toyokeizai.net/articles/-/434665

2020年12月調査
https://toyokeizai.net/articles/-/401177
https://toyokeizai.net/articles/-/399003

2020年5月調査
https://toyokeizai.net/articles/-/364166
https://toyokeizai.net/articles/-/362680
https://toyokeizai.net/articles/-/362009