教員600人調査、約2割が「退職・転職」希望の過酷 「保護者・PTA・地域」対応に大きなストレス

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今年3月、文部科学省がSNSで始めた「#教師のバトン」プロジェクトが、半ば炎上する事態に陥ったのは記憶に新しいところだろう。教員の魅力を高めようとした当初の思惑が外れ、現場からは非難のツイートが集まった。多くの現役教師や退職者から月100時間を超える時間外労働の状況や労働時間に含まれない部活動の負担など、現場の厳しい状況を露呈するツイートが相次いだ。東洋経済ではこれまで、GIGAスクール構想やICT教育に対する現場のリアルな声を把握するため全国600人の小・中学校と高等学校の教員に向けた独自アンケートを実施してきた。今回はICT教育にとどまらず、教育現場の労働環境や働き方の課題について調査を行った。見えてくるのは、やはり現場の過酷な状況である。

長時間労働が常態化する深刻な実態

一般的に労働基準法が適用される業種では、基本的な労働時間は1日8時間が上限と定められている。教員も私立はもちろん、公立であっても労働基準法が原則として適用される。だが、公立の教員に対しては、時間外労働などを記した労基法の一部適用除外を認める給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)があり、長時間労働が常態化する温床とされている。

今回、学校にいる平均時間に関して聞いた質問でも、その深刻な実態は読み取れる。学校滞在時間を8時間未満から15時間以上まで1時間刻みで回答を募ったが、「8時間未満」とする回答は7.0%。「8時間以上」とする回答は全体の93.0%を占めた。最も多かった回答は「10時間以上」の23.3%で、次いで「8時間以上」が17.7%、「12時間以上」が16.2%だった。

ただこれは、あくまで学校にいる時間を聞いているにすぎない。「帰宅後や休日に自宅で仕事をすることがありますか?」という質問では、「ない」とした回答が39.2%と最も多かったものの、「1時間以上」が30.7%、「2時間以上」が15.7%、「3時間以上」6.3%、「4時間以上」2.5%、「5時間以上」も5.7%の回答が寄せられた。つまり、比較的早めに帰宅している先生も、帰宅後自宅で仕事をしている可能性が考えられる。

とくに、毎日「15時間以上」学校に滞在していると答えた先生のほとんどが、自宅で作業する時間も「5時間以上」と回答している。おそらく休日の対応ということなのだろうが、平日に長時間労働を強いられたうえに、休日も自宅で仕事をこなさなければならない過酷な状況がうかがえる。

最も負担なのは「新学習指導要領」と「ICT教育」

ではいったい、どのような業務に時間を費やし、また負荷がかかっているのだろうか? 「新しい教育や、学校現場の課題に対応するために力を入れて勉強している分野」を聞いたところ、「当てはまるものはない」以外で、最も多かった回答が「新学習指導要領」で39.5%、次いで「ICT教育」の35.3%だった。

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