公立で3Dプリンターや高性能PCを配備、戸田東小中「STEAM Lab」が凄い 戸田市の戸ヶ﨑勤教育長「ワクワクする学びを」
ただ、教員側がICTの可能性について伝えきれていない部分があるという。教員はSTEAM LabにあるICT機器の使い方については全員研修を受けているが、今後高めるべきはそういった機器活用の技能ではなく、「ファシリテートの力」だという。「視野の広さや、子どもたちに多くの引き出しを持ってもらうための声がけのスキルを身に付けていかなければなりません」と、清水氏は考えている。
22年度は、ある企業と大学と協力して、ドローンを使ったプログラミング学習を予定しているが、こうした新しい学びを児童の学びにどう落とし込んでいくかも課題だという。
「大切なのは、学んだことをどう使って課題解決に結び付けるのかということ。教師の考えを押し付けず、児童の思考をどのように広げるか、具体的にはプログラミングとPBLをどのように融合できるかが、今後の課題になると思います。また、STEAM教育の『A(アート)』の部分を大事にし、例えば動画編集や作曲アプリなど、表現方法も広げていってあげたいです」(清水氏)
「ワクワクする学び」で「知的好奇心」の育成を
戸田市は、「戸田市SEEP(Subject、EdTech、EBPM、PBL)プロジェクト」という独自の教育改革を進めており、産官学で連携して約70にも上る先進的な取り組みを実施してきた。この改革を牽引してきた同市教育委員会教育長の戸ヶ﨑勤氏は今、GIGAスクール構想の第2フェーズの取り組みの1つとして、「STEAM教育の基盤づくり」に力を入れている。
「児童・生徒に1人1台のGIGA端末は整備されましたが、高度なテクノロジーを扱うにはスペックが不十分です。しかし今後は、データの利活用やプログラミング、デジタルコンテンツの制作などのスキルも当たり前に求められる時代。そのため、子どもたちが本物のテクノロジーに触れられる環境を整えたいと思いました」

その思いに賛同したのが、インテル代表取締役社長の鈴木国正氏だ。ワクワクする学びを子どもたちに提供して知的好奇心を育成したいという点で意気投合し、同社の協力の下、STEAM Labの設置がかなったという。
「モデルケースとなるSTEAM Labは、高度なテクノロジーを自由自在に使える、ワクワク感が満載の空間になりました。本市ではGIGA端末の導入によりパソコンルームが廃止されていますが、他校にもこれからの時代にふさわしいメディアルームを作りたいと思っています」(戸ヶ﨑氏)
しかし、今回のSTEAM Labは企業の協力により無料で作ることができたが、市の予算で賄うとなると難しいという。機器の管理や保守点検の問題もある。戸田東小学校・中学校は協力機関と保守管理を行っており、「教員だけでは限界があるので、外部との連携は必要だと思います」と清水氏は話す。
「予算獲得には国のバックボーンがないと難しい。また、本市は子どもの人口が増えており、学校内に新しくSTEAM Labを作る場所がないのも問題です。しかし、他校の子どもたちにも同じように学べる機会が必要です。実際、市民からもそういった要望がすでにあり、戸田東小学校・中学校でのエビデンスを基に予算化に向けて動いていきたいと考えています」(戸ヶ﨑氏)
(文:酒井明子、編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:風間仁一郎撮影)
東洋経済education × ICT編集部
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