公立で3Dプリンターや高性能PCを配備、戸田東小中「STEAM Lab」が凄い 戸田市の戸ヶ﨑勤教育長「ワクワクする学びを」

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

担任教諭の有泉孝一郎氏が冒頭で簡単に「めあて」などを確認すると、早速作業がスタート。児童たちは3D-CADソフトを使うのは今回が初めてだというが、驚くことにほとんどの児童が上手に作業を進めていった。

有泉氏は、見守るように室内を回っていく。使い方も、自ら教えるのではなく、作業が進んでいる児童に「説明をお願いします」と委ねていたのが印象に残った。

ペアで作業。得意な児童がほかの児童に使い方を教える場面も見られた(左)、児童の様子を見て回る有泉氏(右)

小さな作品でも出力には30分以上かかるため、この日にプレートを仕上げた児童はいなかったが、出力が始まった途端、児童たちは好奇心あふれる様子で3Dプリンターに集まってきた。

室内の中央にある3Dプリンターの様子を確認しに集まる子どもたち

授業の終わりに児童たちからは、「大人になったときに、仕事でこのようなことを行うイメージができた」「難しい部分もあったけれど、楽しかったのでこの経験を将来に生かしたい」など、前向きな感想を聞くことができた。

「まだ年度始めなので今日はやや一斉授業のような場面もありましたが、実はこうしたスタイルはまれです」と、清水氏。2021年度のSTEAM Labでの授業風景について、次のように語る。

「つねに児童がPCと向き合っているわけではありません。教室で話し合うグループもあれば、外に出て調査を行うグループもいますし、3D-CAD ソフトでデザインをするグループ、3Dプリンターで成果物を実証するグループなど、活動は児童たちの判断によってさまざま。STEAM Labが機能し始めると、この場が課題解決するための選択肢の1つになっていきます」

ちなみに児童たちがあちこちで活動するので、教員は各場所を巡回していくという。教室から離れられないときは、教室とSTEAM Labをオンラインでつなぎ、質問がある児童とはチャットでやり取りするそうで、ICTが日常に溶け込んでいる姿がうかがえる。

戸田東小学校 教務主任の清水亨氏

STEAM Lab内の機器やソフトは、社会人が使うような高性能なもの。例えばハイスペックPCは1人1台のGIGA端末よりも起動が速く、画面も大きくきれいなことは児童たちにとっても魅力のようだ。21台の配備なので1クラス分には満たないが、「必然的にペアで作業をすることになり、それが協働的な学びにつながっています」と清水氏は言う。

とくに公立校での配備が珍しい3D-CADソフトと3Dプリンターは、子どもの創造力を高めた。「やはり段ボールで成果物を作るのとは大きく違いますね。3Dプリンターは修正も簡単で、実証研究にかける時間は大幅に短くなったのではないでしょうか」(清水氏)。

例えば昨年度は、小学6年生のグループが、「雨の日に荷物がある中、傘を差すと手がふさがってしまうので怖い」という悩みを解決するために、ランドセルに傘を固定するパーツを作った。筆箱を落とさないように机に設置できる筆箱を制作した児童や、同市のプレゼンテーション大会において医療従事者のためにワッペンを制作した児童もいる。

ランドセルに傘を固定するパーツ(左)、医療従事者のために制作したワッペン(右)
(写真:戸田東小学校提供)

STEAM Labは教員の許可さえ取れば、基本的に自由に出入りができる。そのため昨年度は、休み時間に3Dプリンターを利用する児童も多かったという。一方、評価はどう行っているのか。清水氏は、こう説明する。

「独自のルーブリック表に基づき児童が自己評価をしており、それを教師が共有し、中間報告会や年度末の全体発表会まで見取ります。児童には、日頃から課題が『自分事』になっているか、解決が可能か、相手にとってプラスが生まれるのかといった点をチェックするよう伝えており、最終的にそこが網羅できているかを評価します」

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事