日本経済が世界から遅れる原因作った「真犯人」 なぜこんなにも新興企業が少ないのか

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日本と諸外国、そして日本の大企業と中小企業の間に存在するデジタル・デバイドは、もはや深い溝と化している。IMD(国際経営開発研究所)は、日本のデジタル競争力を64カ国中62位と評価した。

日本の高校生は数学、科学、共同問題解決能力において80カ国中トップクラスに位置する一方で、デジタルに関する教師の知識、デジタルを教える能力、そして教師を支援するリソースにおいては最下位に位置していることが、この低い順位の1つの要因だ。

デジタルスキルの教育がない残念さ

政府の教育アドバイザーである鈴木寛氏は、アメリカに拠点を置くジャパン・ズーミナーにおいて、この低迷の理由はデジタルスキルが大学入試に含まれていないことであると説明した。このため、学校の教師はデジタルスキルを教える必要がないと考えているのだ。

2025年からは情報が入試科目に加わるが、教師に対しては誰が教えるのだろうか。岸田首相が 「人的資本への投資は成長戦略の中核」と言うのであれば、このような問題を優先して解決すべきだ。

政治家になる前は銀行員だった岸田首相は、日本の銀行がいかに若い企業、特に女性創業者に対する融資に抵抗を持っているかを理解している。しかも銀行が融資を行う場合、信用スコアの低い創業後50年の企業より、創業後10年の健全な企業に対して高い金利を課す。これは、「ゾンビ」企業を生かし続けようとする政治的圧力が生んだ結果である。

このような状況を政治的に是正するのは難しいが、ここで提案する措置は、政治的・予算的なコストを抑えながら高い経済的利益を得られるというアドバンテージがある。もし岸田首相がこれらの措置を講じられないのであれば、再分配と成長を両立させる「新しい資本主義」の達成に向けた、より難しい解決策に望みはあるのだろうか。

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