日本の資産運用者が国内債志向を強めている。米長期金利は3年超ぶりの高水準にあるものの、米短期金利の上昇により為替変動リスクをヘッジするためのコストが増加し、米国債の投資妙味が低下していることが背景にある。
国内投資家は米債利回りが上昇すると押し目買いに動くことが多いが、3月以降の急激な円安進行により米国資産が割高化しているため、積極的に購入しづらい状況となっている。さらに、各国金融当局の金融引き締めを背景に為替差損を回避するためのヘッジコストが上昇。円ベースの投資家にとって、米国債のみならずオーストラリア、カナダ、英国など他の外国債で運用する妙味が薄れ、国内債への資金回帰を促す形となっている。
国際収支統計では国内勢の外国債からのシフトが鮮明だ。生命保険会社と投資信託委託会社等は3月に海外中長期債を2002年3月以来の規模となる1兆680億円売り越し、4月も7622億円処分した。日本は世界最大の米国債保有者だが、米財務省の統計によると、日本勢は3月に米国債を統計がさかのぼれる1977年以降で最大の326億ドル売り越している。
生保の主な運用対象である日本国債の超長期債利回りは30年で1%程度。これは約6年ぶりの高水準で、為替ヘッジコストを差し引いた後の米国債や多くの欧州債の10年債利回りを上回るかほぼ同水準だ。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの日本法人で運用部マネジング・ディレクターを務める横谷宏史氏は、「海外、特にFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げをするのが決定的なのでヘッジコストが上がるのはほぼ確実。そうなるとヘッジ外債に対する日本国債の妙味が明らかに増していくだろう」と指摘。「久々にアセットアロケーションの中で国内債券の重要性が高まってくる年度になるのでないか」と話している。
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著者:Chikako Mogi、Garfield Reynolds、小宮弘子
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