高知県が独自に「学習eポータル」を開発して「MEXCBT」に接続する深い狙い 全国自治体初、その陰にある「アドバンテージ」

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「そもそも高知県では、校務支援システムの導入があまり進んでいなかったという実情がありました。それ自体はいいことではないのですが、だからこそ足並みをそろえて、県と市町村で統一した同じシステムを導入することができたのです」

既存のこの体制に学習eポータルの運用を加えることで、市町村立の小中学校から県立の高校に進学した子どもの学習データや履歴もスムーズに移行することができるようになる。公立高校の生徒の場合は、進学するか就職するか、本人の希望に沿った情報をダッシュボードに表示したいとも考えているそうだ。武市氏は「市町村ごとに異なる財政状況が、子どもたちの学びに差を生むことがあってはなりません」と語る。全国自治体初となった独自の学習eポータル開発についても、「高知県はこうした教育への取り組みを全県域でやろうという意識が強いと思います。その機運が、今回の独自プロジェクトを導いたのではないでしょうか」と続けた。

「根拠」の蓄積が教員の行動を変え、職場環境を変える

武市氏はさらに、このプロジェクトが教員の働き方改革にもつながると期待している。労働時間短縮や負担軽減の必要性が叫ばれているが、改善がなかなか進まない一因として、教員自身が変化を好まないということも指摘されている。これは全国的な課題だが、武市氏はこの状況を打破するためには「根拠」が重要だと考えている。

「独自の学習eポータルの開発でさまざまな情報の活用が容易になれば、教員に対しても、根拠がはっきりしたデータがより多く示せるようになります。そうすることによって現場のルールも徐々に変えていけるはずですし、ダッシュボードなどでデータが可視化されることは、教員自身が行動を変えるための根拠にもなると思います」

教員にとって働きやすい職場づくりに取り組むことで、武市氏が期待していることがもう1つある。それは高知県の教員採用市場の活性化だ。教員数の不足は全国的に取り沙汰されており、高知県においても採用は厳しい状況だという。

「優秀な人材を採用するためにも、職場の環境改善は欠かせません。ダッシュボードや校務支援システムも一元化した体制は、高知県全域の教員の負担を大きく減らすでしょう」

ニュースリリースを出し、独自施策を広く知らせたことのもう1つの狙いもここにある。「これから教員を目指す人に、高知県を選んでもらうための判断材料の1つになれば」と武市氏はほほ笑む。その言葉から、戦略をもって教育現場の改革を進める、高知県の積極的な姿勢が伝わってきた。

(文:鈴木絢子、注記のない写真:kazukiatuko/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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