女子中高生「リーダーなりたくない」44.2%のなぜ、自主性伸ばす教育が必要 ジェンダーギャップG7最下位を脱する教育とは
長島氏はこの「発言する」ということ、意見を述べて声を上げることこそが、リーダーシップの根源であると考えている。
「グラフからは、とくに人の目が気になる年齢の中学生の場合、女子校の生徒のほうがやや積極的に発言する傾向も見て取れます。異性のいない環境で伸び伸びやれるという面もあるでしょうし、女の子にとっては女子校のほうがリーダー経験を積みやすいという事実もあります。ただそれもさほど大きな差ではありません。リーダーシップは生まれつきの才能ではなく、経験を積み重ねることで育つものだという前向きなデータとして捉えられると思います」
「俺についてこい」という旧来型のリーダー像を脱却して
学校でリーダーシップが育ちにくいもう1つの理由として、長島氏は日本の従来の教育と、そこから育つ古いリーダー像の問題点を挙げる。
「日本の学校は長い間、いい大学に入ることを最大の目的としてきました。勉強以外のことは余分なものとしてそぎ落とされ、学力レベルが高い学校の教育ほどいびつになるというリスクもありました。その結果として、古い時代の政治家のような、『俺についてこい』というタイプのリーダーが生み出されることが多かったと思います」
多くの日本人は、リーダー像に男性的・権威的なイメージを重ねてきた。「理想の女性上司は?」といったアンケートで、「冷静で理性的な印象の女優」が上位にランクインしやすいことなどからも、リーダーに求めるイメージのステレオタイプがうかがえる。長島氏はこうした発想を「多様性の拒絶」だと指摘する。
「そもそも現在の日本は社会全体の許容度がとても低いと思います。多様性とは違いや弱さを内包するものですが、今はそれらが排除の理由にされてしまう。こうした社会は女性だけでなく、男性にとっても生きづらいものであるはずです」
他者の意見に左右されないことがリーダーシップの要件とされた時代もあったが、複雑化した現代ではそうはいかないと長島氏は話す。指導者や上長に求められる役割はグループによっても違うし、多様化が進む社会で必要なのは、独断を避けて周囲の意見を聞くことができる調整型のリーダーだ。重要なのは他者とのコミュニケーション能力で、それは旧来型のリーダーに不足していたものだともいえる。長島氏はこのリーダーに求められるコミュニケーションについても、その特性に配慮すべきだと語る。
「人と人が関われば、そこには必ず上下関係が生まれ、差別のまなざしが発生します。このリスクは性別を問わないものですが、実社会では女性への差別が多く行われてきたことも事実です。男らしさを強制する社会は男性にとっても苦しく、鬱屈を抱えた男性が自分より下の存在をつくろうと、性別を差別の理由にすることも。こうした問題を解決するためにも、多様性の視点を忘れずにコミュニケーションを取れるリーダーの育成が重要なのです」
自分をサポート役や調整役だと感じている多くの中高生も、他者と正しいコミュニケーションが取れて折衝ができているのならば、それは十分にリーダーになれる資質があるといえる。彼女らに足りないのはリーダーシップの特別な才能ではなく、発言を恐れないリーダーとしての成功体験だけだ。だからこそ、なるべく早い段階で自主性を育てる訓練をする必要があると長島氏は強調する。

早稲田大学大学院修士(政治学)。プラン・インターナショナル・ジャパンではアドボカシーグループリーダーとして政策提言事業に従事。とくにジェンダー主流化、「女性の社会での活躍」を中心に提言活動を行う。その他さまざまなNGO・NPO法人や財団の運営や広報・事業運営、政策提言活動などに携わる。認定NPO法人Malaria No More Japan理事、一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク理事、大妻女子大学非常勤講師、法政大学非常勤講師
(撮影:梅谷秀司)