新聞社に見切りつける若手記者の「必然」と「拙速」 セクショナリズムの弊害大でも、優位性は健在

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人材流出が止まらない新聞業界。ただ、新聞記者には「ほかのメディアやフリーで仕事をする以上の優位性がある」との見方も。毎日新聞出身のノンフィクションライター・石戸諭氏に聞いた。

石戸諭氏は若い新聞記者と話す中で、「一昔前と比べ新聞記者という職業に誇りを持てなくなっている」と感じるという(写真:yamasan/PIXTA)

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朝日新聞社は4月6日、他社媒体の編集権に”介入”したとして、峯村健司記者に懲戒処分を下した。他方、日本経済新聞に関しては若手記者の退職が相次いでいるという厳しい内情が報道されるなど、目下、新聞業界が何かと騒がしい。
個々の事件にはそれぞれの経緯や原因があるものの、底流には新聞社という組織ジャーナリズムの担い手の構造問題も存在していそうだ。新聞社は今、どんな課題を抱えているのか。部数減が止まらない中、どうすれば報道機関として復権できるのか。
今回話を聞いたのは、週刊誌や文芸誌、テレビなどで活躍するノンフィクションライターの石戸諭氏。2016年まで約10年間毎日新聞社に勤めた石戸氏は、新聞社を去る若い世代の心境について「理解できる」と語る一方、フリーランスになったからこそ見えてきた「新聞記者の優位性」もあるという。

SNSで「隣の芝生が青く見える」

――新聞社を辞める若手が続出しています。20代、30代の新聞記者に何が起きているのでしょう。

若い新聞記者と話していると、一昔前に比べて心の持ちようが随分変わっていることに気づく。「新聞記者」という職業に誇りを持っていない。気持ちはわからなくもない。入社早々、地方のサツ回り(警察担当)で上司やキャップからドヤされ、こき使われる割には報われることが少ない。

これ自体は昔から変わらない新米記者のルーティンだが、変わったのは、例えば高校や大学時代の同級生などが、コンサルだ、スタートアップだと時代の最先端を走っている様子がSNSで見えてしまうこと。自分もそうだったが、自分の地味な仕事が惨めに思えて仕方がなかった。

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