「88%が自己理解、78%がメンタルケア」に効果があったAIアプリの正体 学校で実証実験「AIジャーナリング」の可能性
「muuteを学校教育の中で活用することで、生徒は思考や気持ちを整理することができ、メンタルヘルスにも好影響があることがわかりました」と、喜多氏は話す。

感情の言語化に変化、学校生活に組み込むことがカギ
今回の実証実験に参加した追手門学院高等学校の牛込紘太氏は、以前からジャーナリングに興味があり、muuteを活用していたという。
「今、アクティブラーニングが注目されていますが、自分のことをわかっていないとモチベーションが維持できず、主体的・対話的で深い学びも活性化しません。私自身がmuuteを利用する中で、自分はどういうときに感情が動いて、どういう行動を取るのかが実感できていたため、生徒たちもmuuteを使うことで思考や感情の整理ができ、自分が何にアンテナが立ち、どういうときにモチベーションが上がるのか、生徒自身で気づくことができるのではと考えました」(牛込氏)

追手門学院中学校・高等学校 創造コース教育推進部部長、探究科キュレーター
2021年より「教育成果を問い直し、大人も子どももそれぞれが持つ価値を尊重し、互いに創造する社会を目指す」追手門学院の探究科(O-DRIVE)に所属。22年度から現職
参加したのは、牛込氏が担任する高校1年生の1クラス34名と、顧問をしている女子ラグビー部の2年生の部員8名、計42名。クラスでは1日の授業が終わった後のショートホームルームでその日の振り返りを、部員には部活の後に入力してもらった。
感情は、喜怒哀楽という言葉だけでは表せない複雑なものだ。いつどんな感情が湧き上がり、どう行動を取ったのかを記録し、1週間単位で振り返ってみた結果、生徒はどう変わったのか。
牛込氏は、「劇的な変化があったわけではありませんが、明らかに感情を言語化できるようになったと感じます。これがいちばんの成果ですね。言語化することで、自分の気分の起伏やそれに伴う行動パターンに生徒たちは気づくことができたように思います」と話す。
さらに牛込氏は、プライバシー保護の観点から生徒が記入した内容には触れないことを前提に、利用期間や時間、感じていること、考えていること、感情のリズムなどを見える化した「ログ」のスクリーンショットを提出してもらい、みんなでシェアする時間も設けたそうだ。