欧州へのLNG融通が映す深刻なエネルギー事情 欧米の要請受け決断するが、厳しい需給続く
天然ガスの需給が逼迫しているヨーロッパ向けに、日本政府はLNGを融通することを決めた。ただ、日本の協力にも限界はある。
ヨーロッパで起きている天然ガスの需給逼迫を緩和するため、日本政府は2月9日、液化天然ガス(LNG)をヨーロッパ向けに融通することを決めた。
EU(欧州連合)とアメリカからの正式な要請を踏まえたもので、具体的には日本企業に対してLNG船をヨーロッパの港に振り向けるよう求める。経済産業省によると、2月には数隻、3月にはそれを上回るLNG船がヨーロッパの港に到着する見込みだ。
萩生田光一経済産業相は「4月以降も情勢を見ながら可能な限り対応していく」と話している。
昨年末のガス価格は過去最高値に
ヨーロッパでは2021年、風力発電の不調に伴ってガス火力発電の需要が増えた。また、電力総需要の約4割を依存するロシアからの供給も減らされ、例年になく天然ガスの需給が引き締まった。
さらに、ロシアとドイツを直接結ぶ新たな天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」について、ドイツ政府が認可手続きの一時停止を決定。そこにウクライナ問題が重なり、2021年12月末のヨーロッパ市場の天然ガス価格(スポット価格)は、50ドル(100万BTU〈英国熱量単位〉当たり)を超えた。これは過去最高値だった。
その後、アジア向けのLNG船のうち数十隻がヨーロッパに振り向けられたことから、2022年1月のガス価格は大幅に下落している。
ただ、足元の天然ガス在庫は例年よりも大幅に少なく、ヨーロッパでは供給不安が続いている。そうした中で、世界第2位のLNG輸入国である日本もヨーロッパへの支援を求められた形だ。ウクライナへの軍事的な圧力を強めるロシアへの牽制という意味合いも強い。
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