多様性は活力源かつ対立の種 分裂寸前こそ米国の常態 慶応大学名誉教授 阿川尚之氏に聞く

あがわ・なおゆき 1951年生まれ。慶応高校から慶応大学に進むが中退、米ジョージタウン大学、同大学ロースクール卒業。慶応大学総合政策学部教授、在米日本国大使館公使などを歴任。専門は米国憲法。『憲法で読むアメリカ史』『アメリカン・ロイヤーの誕生』など著書多数。(撮影:尾形文繁)
自分勝手でありながら、世界一寄付をする。平等を叫ぶ一方で、競争が大好き。個人主義かと思うと、クラブなどで群れたがる。米国はどこに視点を置くかでまるで違って見える。あまたある矛盾、対立こそが国民に活気を与え、専制を許さなかったのではないか。むしろ、分裂寸前の分断こそが常態の国なのだ。
──初の訪米からなんと50年。
1971年の夏を高校の交換留学生としてハワイで過ごしました。
55年に父(弘之)が、日本の若い知識人に米国を見聞させるロックフェラー・フェローシップで1年近く米国に滞在、被爆地・広島出身の米国嫌いが米国大好きになって帰ってきました(笑)。交換留学の話を聞いた父が「ぜひ行ってこい」と、私より熱心だった。
ハワイは米国でもとりわけ多様な土地でした。日本は互いの年齢が重要で、学生のときってとくに同年齢の集団に属さなくてはというプレッシャーがあり、病気で3年遅れていた私は完全に外れていた。ところが米国は、年齢も人種も民族も関係ない。すべてがよく見えて、一時は完全にかぶれました。
──多様性との関係が始まった。
米国には従来のやり方にとらわれない新しい発想を生む力があり、それは多様性と切り離せない。人種、民族、宗教などを異にする多くの人々がいるから、奇抜な考えが生まれ、その発想を実現しようとする自主性にも富んでいる。フェデックスは、今でいうハブ・アンド・スポークのアイデアを大学のリポートで提出した学生が、Cという低い評価を受け、だったら実証してみせるとつくった会社。マイクロソフトなどガレージ発祥の大企業は多いし、民間で宇宙開発なんて発想も米国が先でしょう。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
トピックボードAD
有料会員限定記事
連載一覧
連載一覧はこちら