冤罪被害を訴える94歳女性 再審開始3度取り消しの理不尽 弁護士 鴨志田祐美氏に聞く

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かもしだ・ゆみ 1962年生まれ。早稲田大学法学部卒業。会社勤務などを経て2002年に40歳で司法試験合格。04年鹿児島県弁護士会登録。大崎事件再審弁護団事務局長、日弁連「再審法改正に関する特別部会」部会長。現在、京都弁護士会に移籍し、京都市内の法律事務所に所属。(撮影:梅谷秀司)
大崎事件と私~アヤ子と祐美の40年
大崎事件と私~アヤ子と祐美の40年(鴨志田祐美 著/LABO/2970円/736ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
再審とは、無実の人が誤って有罪判決を受けた場合に、確定した裁判を「やり直す」手続きだ。しかし、そのハードルは極めて高く、再審を申し立ててもその開始にたどり着くこと自体が困難。近年の司法制度改革でも、一度も問題として取り上げられることなく現在に至っている。

──700ページもの大著です。

再審で無罪を勝ち取り、そのタイミングで回顧録として出そうと以前から書き始めていたのです。それが、地裁、高裁の再審開始決定を最高裁に取り消されるというまさかの展開に。それでも、再審制度の理不尽さを世の中に訴えるには今しかないと、これまでの思いを書きつづったら、すごい分量になってしまいました。

また、ドラマや映画のような内容じゃないと多くの人に読んでもらえないと思って、人間模様などエピソードをふんだんに入れました。エピローグでは私が作詞作曲した、確定審で主犯とされた原口アヤ子さんを励ます歌も披露しています。

これから刑事弁護や再審を手がけたいと思ってくれる同業の読者のニーズにも応えられるように、専門的な内容をしっかりと書き込んだのも分厚くなった一因です。

──大崎事件は四十余年前に発生。

1979年10月15日、鹿児島県の大隅半島にある大崎町という田舎町で、当時42歳の男性が、自宅横の牛小屋の堆肥の中から遺体で発見されました。このときに男性を絞殺した主犯として逮捕され、懲役10年の有罪判決を受けたのが、男性の長兄の妻のアヤ子さんでした。共犯者とされた、死亡した男性の兄2人および次兄の長男は犯行を認めて争わず、全員が有罪判決を受けて服役しました。他方、アヤ子さんだけは裁判でも「やっていない」と主張し続けたものの実刑判決が確定し、満期服役しました。共犯者とされた3人はいずれも知的・精神的な障害を抱えていましたが、法廷でも彼らの負う障害が配慮されることはほとんどありませんでした。

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