退場を命じるべき反則をとがめなかった東証。その結果、株式市場から規律が失われていく。
投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズによる東芝買収騒動はとりあえず収束した。CVCの初期提案が具体性を欠くため、東芝が評価するに至らなかったのが表面上の理由だ。
東芝は「上場会社としてのメリットを生かすことが企業価値の向上につながると現時点では確信しているが、非上場化を含め様々な企業価値向上のための提案を選択肢として排除するものではない」(4月20日公表のIRリリース)としている。
もっとも、この説明を額面どおりに受け取る向きは少ない。CVCの提案が具体的なものにならなかったのは東芝の拒絶が強かったからだ。「今年1月に東証1部に復帰したばかり。上場廃止などとんでもない」「ファンドに切り売りされてはたまらない」。複数の東芝関係者の言葉の端々には、非上場化を前提にした買収提案など論外という本音がうかがえる。
東芝は2015年の不正会計を機に上場廃止の危機にさらされてきた。危機を回避するために医療機器や半導体メモリーといった虎の子事業の売却に追い込まれたほか、17年に実施した6000億円の第三者割当増資で登場したモノ言う株主との緊張関係が生じるなど、株式市場や株主との間合いは、つねに経営の重要課題だった。
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