鉄道には「満席にする」発想がない
――航空業界と鉄道業界の仕事のやり方で最も違う点は。
航空業界にはトータルレベニューの考え方が染み付いていて、1機に何席あって、それをいかに埋め、どれだけ稼ぐかをつねに考えている。例年ならお盆の時期は、飛行機のエコノミークラスはオーバーブック(過剰予約)しており、エコノミーの何人かをビジネスクラスに回して、できるだけ多くの客を乗せる。100万円のファーストシートも空席ならドアを閉めた瞬間に価値がゼロになる。カラで飛ばすくらいなら少しでも代金をいただいて飛ばしたほうがいいという発想が根底にある。
一方、鉄道業界には1本の列車を満席にするという発想はないように思う。新幹線の指定席が満席で自由席に立っている人に、「グリーン車に空席がございますので、ご希望のお客様は○号車にいる車掌に声をおかけください」とアナウンスすればグリーン席が売れるかもしれないのに、そんな車内放送は一度も聞いたことがない。でも航空会社なら出発前のJALのゲートで「クラスJに空きがございます。お一人様1000円で快適な旅はいかがですか」とアナウンスしているのをよく聞く。
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