政治との攻防の末に独立どころか財政支援役へ
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
短期金利が0.5%を下回ると、金融政策は効果を失う。もはや景気を十分刺激できず、インフレ醸成も難しい。1998年に日銀が独立性を得た時、すでに金融政策はほぼ限界にあった。ただ、万策尽きたとは言えない。効果は小さくとも拡張性のある新たな手段を考え出す日銀マンが頭角を現していった。気鋭のジャーナリストが、金融政策に関する四半世紀の政治との攻防を描いた労作だ。
金融危機に直面した松下時代。不良債権問題を抱える中、金融ビッグバンを進め、市場論理の貫徹が追求される。現在なら、不況期の金融機関の法的整理は、マクロ経済への悪影響が大きく、決して選択されない。当時、大蔵省と日銀の中枢が理解していなかったのは驚きだ。
独立性の罠に陥った速水時代。金融政策運営には政府との連携が不可欠だが、独立性を意識しすぎ、協調体制は瓦解する。デフレ時代にインフレファイターを総裁に据えただけでなく、棚ぼた的に獲得された独立性の意味を多くの日銀幹部も履き違えていた。当時、円高回避を巡り、後方から日銀が弾を撃ったと受け止めたのが、後に日銀総裁となる財務官の黒田東彦だった。
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