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『新・資本主義論 「見捨てない社会」を取り戻すために』 『ファシズム 警告の書』『コモンの再生』ほか

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倫理的な人間関係の復活提唱 中道左派の新しいバイブル
評者/北海道大学教授 橋本 努

『新・資本主義論 「見捨てない社会」を取り戻すために』ポール・コリアー 著/伊藤 真 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile]Paul Collier オックスフォード大学ブラヴァトニック公共政策大学院教授。フィールドワークの中心はアフリカ。グローバリズムの弊害を訴える一方、途上国援助なども、運用を間違えれば救うべき人々を不幸にすると指摘。『最底辺の10億人』『収奪の星』『エクソダス』など著書多数。

グローバル資本主義が米国内で生み出した敗者は、「白人労働者層」という蔑称で呼ばれるようになった。近年、米国白人の大卒未満の平均余命は低下傾向にあり、1980年代生まれの約半数は、両親が同じ年齢だったころに比べて貧しくなったという。白人労働者層の76%は、自分の子どもたちの世代がさらにいっそう貧しくなるだろうと悲観している。

一方の英国ロンドンでは、人口構成に異変が起きている。ロンドンの現在の人口は50年当時とほぼ同じであるが、2011年の時点でその37%は移民の第1世代になった。この数十年間で、生粋の英国人はロンドンから追い出され、代わって狭い住環境でも勤勉に働く有能な移民たちが移り住んできた。

こうした事態の深刻さに政府はうまく対処できているのかといえば、社会の中枢を担うエリートたちはますますコスモポリタンになり、相互扶助の観点から国民国家を運営する発想に乏しくなっている。そんなエリートたちが主導する政策を国民が信頼するのかといえば、その答えは残念ながら「ノー」であろう。

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