倫理的な人間関係の復活提唱 中道左派の新しいバイブル
評者/北海道大学教授 橋本 努
グローバル資本主義が米国内で生み出した敗者は、「白人労働者層」という蔑称で呼ばれるようになった。近年、米国白人の大卒未満の平均余命は低下傾向にあり、1980年代生まれの約半数は、両親が同じ年齢だったころに比べて貧しくなったという。白人労働者層の76%は、自分の子どもたちの世代がさらにいっそう貧しくなるだろうと悲観している。
一方の英国ロンドンでは、人口構成に異変が起きている。ロンドンの現在の人口は50年当時とほぼ同じであるが、2011年の時点でその37%は移民の第1世代になった。この数十年間で、生粋の英国人はロンドンから追い出され、代わって狭い住環境でも勤勉に働く有能な移民たちが移り住んできた。
こうした事態の深刻さに政府はうまく対処できているのかといえば、社会の中枢を担うエリートたちはますますコスモポリタンになり、相互扶助の観点から国民国家を運営する発想に乏しくなっている。そんなエリートたちが主導する政策を国民が信頼するのかといえば、その答えは残念ながら「ノー」であろう。
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