デジタル化で成長継続可能? 格差拡大、社会分断に課題
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
菅義偉首相は2050年までの脱炭素化を掲げた。グリーンとデジタルの融合が成長戦略になると確信したのだろう。はたして成長と脱炭素の両立は可能か。飽くなき成長を求める資本主義が地球を破壊する、という主張も勢いを増す。本書は『ザ・セカンド・マシン・エイジ』などの著作で、デジタル社会の到来をいち早く予測した経済学者が解決策を探ったもの。
驚いたことに、投入資源より多くのものを産出する時代の萌芽は1970年代に生じていた。より高い利益を追求しコスト削減を求める資本主義と、テクノロジーとの組み合わせがそれを可能にしたという。さらにデジタル革命によって脱物質化が本格化しているため、成長を諦める必要はないと主張する。実感に乏しいのは日本の脱物質化が遅れているからだろうか。
しかし、人々の欲望に任せたままで大丈夫なのか。地球温暖化の核心は市場メカニズムが機能しない外部性にあるため、資本主義をコントロールする市民の自覚と政府の規制が不可欠という。豊かになった人々が健康や安全を志向し、それに対応した政府規制が行われ、先進国からは公害が消えた。中国も公害を解消しつつあり、今や欧州と並ぶグリーン大国に変貌しそうだ。インドやインドネシアは絶望的に見えるが、国民の健康や地球環境に配慮しない政権は存続が難しいということか。
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