「かわいそうだった」が命のビザ発給の強い動機
──杉原の四男・伸生氏が「千畝の人間性まで掘り起こして分析されている」と評価しています。
伸生氏から生前の杉原について多くの証言を得ました。またビザ発給当時の状況など、外交電文といった当時の資料を読み解くことで、彼の心の中に分け入ってビザ発給までの決断と覚悟に迫りました。これまでの杉原像とは違う点も明らかにしました。
──ビザ発給は「避難民らがかわいそうだった」からという杉原の率直な気持ちが印象的です。
当時の外務省の訓令は「ビザ発給の要件を満たしていない者にビザを出すな」でした。事実上の発給禁止です。ただ、杉原はドイツの動きを分析した結果、「ユダヤ人をここに残しては、すべてが迫害・殺害される」と確信していたことがわかります。杉原は生前の1977年に日本のテレビ局とのインタビューで「避難民は行くところがない、後ろからドイツが来るから、日本を通ってよその国へ行くのだ」と訴えています。「(ビザ発給を)断ったら、どこへ行くかね。かわいそうだ」と率直に述べています。それこそ、行動の原点だったと思います。
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