
なかやま・ちかこ 1964年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学、ウィーン大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。専門は社会思想史、経済思想。 著書に『経済戦争の理論』『経済ジェノサイド』。(撮影:今井康一)
かつて経済学は人が「食べて生きていく」ことと密接な関係があり、経済学者はよりよい社会実現のための政策提言をためらわなかった。が、分化、専門化が進んだ今、主流の自由主義経済学から格差是正への提言などは聞こえてこない。そんな「緩い学問」に活を入れ、ポランニーなどの思想を軸に現状打開の道を探る。
──執筆当初は“中立地帯”に。
お題が「著者なりの経済思想の教科書」だったので(笑)。今は価値観が違うと、それだけで話を聞いてもらえない。別の立場を取る人にも届くようにと思いました。柄にもなく価値判断を極力避けて書き進めたら、編集者に「ドラッカーもシュルツもよくやっているし、では伝わらない。いいか悪いか、どっち?」と言われました。
──吹っ切れて「堕落している」。
限界革命のメンガーあたりから、経済学は自然科学幻想にとらわれてしまった。人間の営み、とりわけ政治はドロドロして一般性がないとして、数値で表せれば説得力があると考える。わからないではないが、中立的に見える数字がいかに価値判断を含んでいるかは以前からいわれています。また、数字で語れることに限界を覚え、価値観を表明できることに魅力を感じて数学から経済学に移る人もいるのです。自由主義経済学の人たちは逆行しています。
主たる道具である数理モデルで確実に言えないことは守備範囲外と居直る。経済が政治、社会に大きく影響し、経済学者への期待が潜在しているのに、関係ない感や政治への忌避感がすごい。
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