
すずき・てつや 1957年生まれ。京都大学文学部、教育学部卒。京都の編集プロダクションで学術書のリライト、編集に携わった後、94年に京都大学学術出版会に転職、2006年より現職。著書に『学術書を書く』『世界大学ランキングと知の序列化──大学評価と国際競争を問う』『京都の「戦争遺跡」をめぐる』(いずれも共著)など。(撮影:ヒラオカスタジオ)
震災後の復興、コロナ後の社会、最先端医療の先の人の命の扱い方。現代が抱える問題はどれ一つ単一分野では解決できない。専門の知を超え社会全体で考えるため、専門外の世界を知る、学ぶことの大切さを著者は説く。とはいえ、一般読者にはハードルが高く敬遠しがちなのが学術書だ。
──ここでいう学術書とは?
学術的な訓練を受けた人間が、学術的な関心から物事を論じているもの。引用元やエビデンスを明らかにし、学術的な作法にのっとっていれば、新書だって学術書としていいと思います。歴史的な認識、事実の経緯、さまざまな先行研究を引用しその問題を指摘しながら、自分の議論をするのが学術の作法。決して自分が絶対ではなく、対立する見方があるのを自覚する。相手の論理を知ったうえで、「こんな議論もあるよ」と公平に紹介し、そのうえで自分の話を聞いてもらいたい。そういう姿勢がなければ、たとえ著者が学者であっても学術書とはいえないと考えます。
──学術書=難解なイメージです。
学術書と呼ばれるものの多くは、耳慣れない専門用語やデータ・図表で埋め尽くされていて、基礎知識がない読者には読みにくいのは確かです。たまにペダンティック(衒学(げんがく)的)な“悪文”でわざわざ難しいフリをした本もあります。でも粘り強く、わからない箇所はネットで調べながら、ぜひ読み進めてほしい。まったく理解不能でお手上げ、ということにはならないはずです。難しい本=噛み応えのある本と考えてはどうでしょう。スポーツ同様、知の力も負荷のかかるトレーニングで養われます。
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