知的で過激、圧倒的熱量 日本広告史上の極致 編集者 河尻亨一氏に聞く

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かわじり・こういち 1974年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、美大予備校講師を経てマドラ出版入社。2009年独立。イベント、企業コンテンツ企画制作も。東北芸術工科大学客員教授。訳書に『CREATIVE SUPERPOWERS』。(撮影:今井康一)
 
石岡瑛子(いしおか・えいこ) 1938年生まれ。東京芸術大学卒業後、資生堂宣伝部入社。70年独立。美術・衣装デザインほか多領域で活躍、グラミー賞、アカデミー賞など多数受賞。2012年逝去。作品集『EIKO by EIKO』ほか。
TIMELESS 石岡瑛子とその時代
TIMELESS 石岡瑛子とその時代(河尻亨一 著/朝日新聞出版/2800円+税/541ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
伝説的アートディレクターの仕事と人生を追った540ページに及ぶ大部。広告業界にセンセーションを巻き起こし、米国に拠点を移して映画・演劇等の衣装デザイン、美術で世界的名声を築いた石岡瑛子。完全武装したクールなポートレートと裏腹の素顔、最後まで自作は手がけず自称「アルチザン」に徹した姿を、フランシス・コッポラ、マイルス・デイビス、レニ・リーフェンシュタールほか大物たちとの共作風景と共に描く。大規模な回顧展を開催中の東京都現代美術館で話を聞いた。

──予想に反し20、30代の来場者がとても多くて驚きました。

実体験で石岡瑛子の名を知っているのは、僕ら40代半ばが下限でしょうね。彼女が亡くなったとき、僕は美術大学で約80人のクラスを持っていたんですけど、彼女を知っていたのはたった2人でした。つまり、現在30代前半でアート系の仕事をしている人間でその程度だから、今の20代はほぼ知らないと言っていい。ところがツイッター上には「すごい熱量」「衝撃」「圧倒的な美力」「もはやパワースポット」などのコメントがあふれていて、それが多くの若者を引きつけているんだと思います。

──ご自身も、彼女がパルコの広告で一躍“時の人”となった、ちょうどその頃のお生まれですね。

僕が瑛子さんを知ったのは高校生のとき。映画『ドラキュラ』の衣装で米アカデミー賞を受賞し、すごい日本人がいるんだなと思いました。その後、就職して雑誌『広告批評』に携わる中で“瑛子さん伝説”をさんざん聞かされた。初めて取材でお会いしたのは、彼女が2008年北京オリンピック開会式の衣装を準備していたとき。伝説の人が突如リアルな人として僕の前に立ち現れた。

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