巨費を投じて買収に踏み切る背景には、広がるAI向け半導体を支配したいとの思惑がある。
王者・米インテルを7月に株式時価総額で抜いたのが米エヌビディアだ。画像処理に強い半導体GPUを展開し、ゲーム向けのほかデータセンターでも多く使用されており、新型コロナ禍も追い風にして業績を伸ばしている。
だが、エヌビディアが最も注目されているのはAI(人工知能)半導体と呼ばれる分野だ。GPUは複数の演算処理を同時に素早く行う「並列処理」が得意で、大量のデータ処理を行うAIに必要なディープラーニング(深層学習)に適している。AIの利用は今後爆発的に増えるとみられ、この分野を掌握すれば半導体業界の覇者になれる。近年の株価高騰はこうした期待を反映したものだ。
そのエヌビディアが9月に大きなニュースで世界を驚かせた。ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手Arm(アーム)を最大4.2兆円の巨額で買収すると発表したからだ。
SBGが2016年にアーム買収に費やしたのは3.3兆円。それからわずか約4年で1兆円近く上乗せしたことになる。SBGは売却額の過半をエヌビディアの株式で受け取り、今後も間接的にアームへの影響を残す。SBGの孫正義会長兼社長は「エヌビディアの主要株主として、アームの成長に投資することを楽しみにしている」とコメントした。
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