──大手総合商社の中で住友商事だけが、今期(2021年3月期)は最終赤字見通しを出しています。何が問題だと考えていますか。
これまでの住友商事は一言でいえば、自動車関連とオイル&ガスなどのエネルギー分野が事業の中心を占めてきた。現在のセグメントだと、金属、輸送機・建機、資源・化学品の3事業が収益を上げて、その資源をリテールや不動産、メディア・デジタル事業に投じてきた。何十年もかけて育成してきたため、いまやメディア・デジタルや生活・不動産、インフラの3事業が金属など3事業の収益を逆転するぐらいになった。
今期は、金属や資源・化学品が落ち込む。当社はマダガスカルでニッケルの採掘から製錬までを行うアンバトビープロジェクトを手がけている。このニッケルは2次電池のための重要資源だが、マダガスカル政府が新型コロナウイルスの影響で飛行機の往来を止めたため、当社もアンバトビーの操業を2020年3月末に止めると決断した。操業を止めたことでキャッシュの流入が止まり、(2020年度の第1四半期に)減損を計上するに至った。
金属や資源事業が苦戦する一方で、発電所のようなストックを長期で保有して収益を上げるインフラ事業は安定している。スーパーのサミット、ドラッグストアのトモズといった消費者の生活に必要な商品を扱うリテール事業にも追い風が吹いている。
これまで産業構造の変化が徐々に近づいていると理解はしていたが、新型コロナウイルスで変化のスピードが一気に上がった。タイムマシンに乗ったような感覚だ。
──メディア・デジタル事業の足元の状況は?
メディア・デジタルには、全国でCATV事業を展開するジェイコム(KDDIと折半出資)、テレビ通販最大手のジュピターショップチャンネル(住商が45%出資)、システムインテグレーターのSCSK(住商が50.64%出資)、携帯ショップなどを展開するティーガイア(住商が41.89%出資)といった事業がある。
住友商事グループを支えていくために収益の柱をより太くしていかないといけない。ジェイコムは数十年かけて大きなプラットフォームをつくってきた。現在、CATVや電力サービスなどの加入者は約554万世帯にのぼり、大きな収益を生んでいる。
足元は概ね堅調だが、一部でコロナによる影響が出た。ティーガイアは4~5月に営業時間を短縮した。だが、ここに来てリモートワークが増えたので「携帯のデータ通信プランの容量を増やしたい」などの需要もあり、顧客は戻ってきている。
ジュピターショップチャンネルはテレビショッピングを24時間生放送で放映していたが、制作現場のクリーニングや従業員の出社が一部制限されたことから生放送の時間を1日7時間に縮小した。現在は16時間にまで戻しており、売り上げは回復してきている。ジェイコムも堅調だ。家で過ごす時間が長くなっていることから、OTTサービス(ネットを介した動画配信など)や電力需要が伸びている。
──ジェイコムは堅調とのことですが、ネットフリックスやフールーなど動画配信サイトの存在感が増しています。
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