米国の内政が深刻な危機に直面し、外交政策も混乱している。内政が危機的状況に陥った直接のきっかけは、白人警官によるアフリカ系米国人殺害事件だった。〈米中西部ミネソタ州ミネアポリス市当局は(5月)26日、白人警官が容疑者の黒人男性を逮捕する際、行き過ぎた暴力行為があったとして関係する4人の警官を解雇した。/4人のうち1人の白人警官が25日、詐欺容疑でジョージ・フロイドさん(46)を同市近郊で逮捕する際、膝でフロイドさんの首を地面に押し付け、フロイドさんが「息ができない」と訴える様子が動画で拡散した。フロイドさんはその後、死亡した〉(5月27日付「共同通信」)。
この動画がSNSで拡散し、米国全土に抗議活動が広がった。最初は平和なデモ行進と集会だったが、徐々に過激化し、放火や略奪が行われるようになった。〈白人警察官による米ミネソタ州の黒人暴行死事件が引き金となった全米の抗議デモは、公民権運動の旗手、キング牧師の1968年の暗殺時以来の騒乱に発展した。香港デモへの統制強化を進める中国への制裁を表明したトランプ米政権だが、自国のデモ鎮圧には武力行使も辞さない姿勢もみせる。矛盾の背後にあるのは、根深い人種対立と新型コロナウイルスが露呈させた社会の分断だ。(中略)/ホワイトハウス近くの歴代大統領ゆかりの教会が放火され、警察が暴徒化したデモ隊に催涙弾を発射する。不安定な政治に揺れる途上国ではなく、世界最強国の首都を照らす光景だ。米メディアはトランプ米大統領がホワイトハウス敷地内の地下室に一時的に退避したとも伝える〉(6月1日付「日本経済新聞」電子版)。大統領が地下壕(ごう)に避難するという事態は尋常でない。おそらく2001年9月11日の米同時多発テロ以降、初めての出来事だと思う。米国内で人種、貧富の差による分断がすでに臨界点に達していたところに、白人警官によるアフリカ系米国人殺害事件が火をつけて爆発したのだ。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら