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トヨタ石田退三会長が恐れた「資本自由化」 1965年5月1日号「この人にこの問いを」

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「週刊東洋経済」1965年5月1日号に掲載された3ページのインタビュー

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外資の国内市場参入が自由化されたのが1965年のこと。これを前にして、通産省は外資に対抗できるだけの力を付けさせようと、さまざまな業界に対して再編・合併の指導に乗り出す。
しかし、当時の自動車業界の顔役であった石田退三氏は、この圧力をはね除ける。「あなたがた経済雑誌だって何種類もの競合雑誌があって、お互いに競争しているから、いい雑誌ができる。自動車業界だけが、車種調整だの、合同だのと言われても、簡単にできるわけがないでしょう」「ダンゴとモチをこね合わせるようなもので、合併後にくる混乱のほうが、私はこわい」と語っている。
結果として、多くの企業が独立企業として残った日本の自動車メーカーだが、今では多くのメーカーが独立系ではなくなった。結局は「ダンゴとモチ」をこね合わせる必要が出てきた、といえるのかもしれない。

 

業界の再編成は難しい、ルールにのっとった自由競争を

自由化はまだ早い

――乗用車の自由化は、どうやら9月1日実施の線が濃いようですね。石田さんはかねてから、自由化尚早論を唱えておられましたが、もはや9月実施もやむなし、ということで、先日トヨタ系関係会社の幹部の方々を集めて、だいぶハッパをかけられたそうですね。

石田 日本の運命として、いずれは自由化しなければならないでしょうが、ただ、部品工業や販売店を含めて考えた場合、すでに自由化態勢は整ったと言えるかどうか。これはむしろあなたがたが判断してほしい。

――しかし、最近は自動車の輸出も、ずいぶん伸びているようですね。採算はともかく……。

石田 確かに輸出は増えてきました。昔は、機械のなかで紡織機の輸出が一番多いと、ハナを高くしていたんですが、いまでは自動車のほうが段違いに多くなった。だが、それでは生産の何割を輸出しているかというと、まだ自動車は微々たるものです。そこになお時期尚早の点がありはしないか。

しかも、採算がよくない。繊維機械のほうは、日本の紡績業があんな状態ですから、どうしても海外に出なければ自分たちの明日の仕事がない。そこでいろいろ苦労もして、いまでは十分利益のある輸出をしております。ところが、自動車のほうは、そこまでなかなか行っていないような気がします。

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