この重要指示を実現するには、新型肺炎の実態を正確かつタイムリーに、高い透明性を伴って公開し、国内外からの関心に応えなければならない。それを求める中央の意図は明確だった。
電話口で医師は泣き出した
1月21日、武漢市当局は「医療関係者15人について新型コロナウイルスへの感染が確認された」と初めて公表した。しかし財新記者の取材によれば、実際の医療関係の感染者数はそれをはるかに上回っていた。
国内外の複数の研究によれば、新型コロナウイルスの伝播力はSARS(重症急性呼吸器症候群)よりも高い可能性がある。中国疾病予防管理センター副主任の馮子健は1月27日夜、中国中央テレビのインタビューで「新型コロナウイルスの伝播力はSARSに近く、1人の患者から平均2~3人に感染する力がある」と語った。
世界保健機関(WHO)は北京時間1月24日午前2時に発表した声明のなかで、新型コロナウイルスの武漢での4次感染および武漢以外での2次感染の症例について中国当局から報告を受けたと明らかにした。
だが、武漢の病院では患者および医療関係者間の院内感染が深刻で、ある患者のウイルスが何代目の感染かを遡るのは事実上困難になっている。
財新記者が武漢の多数の病院を回ってみると、大部分の病院では発熱外来の患者たちが半ば密閉された空間に集中している状況だった。例えば、待合ロビーの出入口が1、2カ所の小さな回転ドアしかないという具合だ。そんな空間で患者と付添人が何時間も過ごせば、感染リスクが極めて高い。
「武漢では感染が何代目かを調べても意味がない。もう見分けられないからだ」。武漢に派遣された専門家チームのあるメンバーは、財新記者にそう語った。
1月22日深夜、ある大型総合病院の放射線科医の劉力が、財新記者に電話をかけてきた。
「24時間でCT検査を200件くらいやり、新型肺炎の疑いが143件あった」
この数字を告げた後、劉はこらえきれず泣き出してしまった。
1月23日午前2時、武漢市政府は公共交通機関の運行を停止する「都市封鎖令」を発した。劉の電話からまもなくのことだった。
(文中敬称略、李雲華と劉力は仮名、初出:「財新週刊」2020年2月3日号)
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