国家の持続可能性が問われる
1月31日に英国はEU(欧州連合)を離脱した。冷戦終結後、国境の壁を越えて人と物が動き、国家もより高次の国際共同体の下へ置かれるかと思われた趨勢が、ここに来て逆行し始めたかのようである。かつては、グローバル化は国家の衰退をもたらすといわれたが、今や国家が復権し始めたかのようにも見える。
事実、英国は、税関など入国管理、国境警備の行政サービスやEUが行ってきた規制行政を国家として引き受ける必要に迫られる。国際組織からの離脱により、国家はかつて国際組織に譲り渡した役割を再度引き受け、拡大するのである。
また、このEU離脱は、移民の流入に対する反発や、格差社会での生活苦を紛らわすために、EUを標的にした政治家によるあおりの産物という面も否定できない。いわばグローバル化の生み出した格差の被害者が、ポピュリズムとしてEU離脱を支持したのである。
とはいえ、そもそもグローバル化の勝者は、格差社会の勝ち組であり、その拠点も国境を越え、自在に移せる。だが、格差社会の敗者たちが身を寄せるのは、国家しかない。EU離脱が人々の生活苦を改善するとはいえないが、ポピュリズムの動きは、あくまでも国家単位の政治の枠組みの中でこそ、その主張が通るのである。つまりは、グローバル化がその敗者を生み出したことで、彼らのセーフティーネットとして国家の役割が再認識されたことになる。
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