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『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化–遺伝子革命〉』 『ラグビーの世界史 楕円球をめぐる二百年』ほか

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権威者、多数派に従う必然、文化の発展で進化は続く
評者・BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化–遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック 著/今西康子 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] Joseph Henrich/1991年に航空宇宙工学と人類学の学士号を取得後、航空機メーカーに2年間勤務。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校で人類学修士、博士号取得。現、米ハーバード大学教授。さまざまな学問領域の知見を背景に、研究対象は太古の人類の化石や石器、ヒトゲノムなど幅広い。

鋭い爪も牙も持たない脆弱なヒトがいかに地球を支配し、高度な文化を築き得たのか。標準学説は、遺伝的進化を遂げた後、ヒトは文化を構築したと考えてきた。ハーバード大学の人類進化生物学教授が達した結論は、ヒトの祖先は早い段階から文化を持ち、累積した文化に適応すべく遺伝的に変化し、両者の相互作用で進化が加速したというものだ。文化がヒトを進化させる駆動力だった。

例えば石器で食料を刻み、火を用い食物を軟らかくし、消化の一部をアウトソースしたから、牙が無くなり、顎は小さく消化管も短くなった。動物は消化に多大なエネルギーを割くが、節約分を巨大化する脳の活動に充てた。また、水をためる容器を得たことで長距離走が可能になり、持久狩猟に適した解剖学的構造や生理機能を獲得していった。

脳が巨大化したといっても、現在もわれわれが個体として持つ知識量は限られる。道具の作り方、食料の保存の仕方を学び、改良して次世代に伝える。秀でた個体の単独の発見ではなく、何世代もかけて集団脳に知識が蓄積されたのだ。生存のための知識が膨大になると、取得するための時間が必要となり幼年期が長期化し、改良した技術を次世代に伝えるべく閉経後の生存期間も長くなった。

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