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『人口で語る世界史』 『我々は生命を創れるのか 合成生物学が生みだしつつあるもの』ほか

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人口が歴史的事象を左右、今後も社会に大きな影響
評者・立正大学教授 高橋美由紀

『人口で語る世界史』ポール・モーランド 著/渡会圭子 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] Paul Morland/英オックスフォード大学で哲学、政治、経済の学士号、国際関係論の修士号を取得。ロンドン大学で博士号取得、同大バークベック・カレッジの准研究員。英独の市民権を持ち、フランス語も堪能という多文化的な背景を持つ。本書は初の一般向け著書で8カ国で出版された。

歴史上の出来事は、人口数・人口の年齢構成・性比・宗教別および民族別人口の割合と大きく関わってきた。例えば、米国参戦後の第1次世界大戦における西部戦線では、米国から次々に兵士が送られてくる可能性がドイツ兵の戦意を低下させた。軍事技術に大差がなければ、数が戦争の勝敗を決定した。

この200年間に人口学的に根本的な変化が生じ、地球上の人口を急速に増加させた。本書が1800年以降を中心に扱うのは、その変化を明らかにするためだ。そして、「人口動向と地球の運命はこれからも互いにかかわり続ける」。

著者は必ずしも人口決定論者ではない。社会に若者が多い場合には犯罪が増えると述べた後に、その反例も示す。ただ、国際的にも国内的にも「人口数やその構成」による社会への影響は看過できない。

産業革命以降にマルサスの罠(人口増による食料不足が貧困や死亡を招く)から解き放たれた英国は人口増加と経済発展により世界を席巻した。また、今世紀半ばには、米国の白人が国内人口数の半分を切ると予測され、そのような社会ではトランプ氏が大統領に選ばれることはない。

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