認定保育ママの成功は日本の政策立案に示唆
評者 東京外国語大学大学院教授 渡邊啓貴
本書は今後の先進社会における労働市場の新しいあり方を視野に入れながら、合計特殊出生率が先進国で最も高いフランスの子育て制度を論じた好著だ。日本での子育て支援策、女性就業人口を増やす方策を考えるうえでも示唆的な論点を多く含んでいる。
欧米諸国は「男性稼ぎ手モデル」の保守主義レジームから「女性の労働市場参画」へと移行しつつあるが、フランスは評者が留学していた1980年代、すでに多くのカップルが共働きだった。男性1人の給料は日本を下回るが、ベビーシッターを雇うことによって女性の就業が可能となり、世帯収入は日本の男性1人分を超えていた。
女性の労働市場参画はライフスタイルの多様化を意味する。あらゆる家族モデルに対応した「自由選択」(親自身で子供を保育することを含む、様々な保育方法を選択する自由)が可能となる労働環境が必要になってくる。
フランスがすべての就業者を対象に家族手当を整備したのは39年だが、それは著者の分類では2階建て構造の1階部分にあたる基礎的給付である(普遍主義的な現金給付)。今日問題となるのは、2階の補足手当部分、つまり就業自由選択補足手当・育児休業給付と、保育方法自由選択補足手当(親が保育者を雇用して働きながら子育てを行うための手当)の部分である。
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