危機の時代に義を貫き精神史の背骨を成す人々
評者 兵庫県立大学大学院客員教授 中沢孝夫
書名の「義」は、内村鑑三の「日本は美を愛する点に於てはギリシヤに似て居るが、其民のうちに強く義を愛する者があるが故に、其国民性にユダヤ的方面がある」という言葉に由来する。
花鳥、山水など日本は「美」に満ちているが、それは物の美に過ぎない。見てくれの悪かったソクラテスやパウロを挙げつつ、内村はこう述べる。「人間に在りては其美は内に在りて外にはない。人の衷なる美、それが義である」。衷なる美、つまり心の美が義なのだ。著者はエドマンド・バークを援用して、義は崇高と言い換えられるとする。
本書は田中小実昌から始まり、五味康祐、大佛次郎、小林秀雄、北村透谷、そして内村鑑三といった17人の「強く義を愛する者」の足跡をたどることによって、近代日本精神史の背骨を明らかにする。
「アウトサイダー」とは、日本で多数派である美から見た表現である。だが、小林秀雄論や大佛次郎論を読み進むうちに、これらの人々の言説こそ、日本の知の「メインストリーム」と思えてくる。
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