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共働き世代が集う「伸び筋の街」 小岩(東京都江戸川区)

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JR総武線は東京と千葉をつなぐ首都圏の主要幹線の一つである。この総武線の東京都内における東端の駅が小岩だ。小岩駅には快速電車が停車しない。

このエリアは江戸川と新中川に挟まれた中州のような立地であり、これまで住宅地としてほとんど注目されてこなかった。住宅環境としても、駅前は広場が整備されておらず、飲食店や物販店が所狭しと立ち並び、やや猥雑な印象を受ける。商店街は物価が安く、下町情緒も感じられるものの、夜は若い女性などにはちょっと立ち寄りがたい雰囲気の場所もある。江戸川区自体、あまり治安がよくないという印象が強く、これまでは「住みたい街」として選択する人は少なかったようだ。

ところがこの街は今「伸び筋の街」として評価され始めている。小岩駅は快速電車こそ停車しないが、錦糸町駅まで直通で10分。錦糸町には東京メトロ半蔵門線が接続するので、三越前や大手町、また表参道、渋谷方面へのアクセスも軽快だ。秋葉原駅や東京駅にも15分程度でアクセスでき、都心の「働き世代」が住宅選びの際にとりわけ重視する「交通利便性」を見事に備えている。

そして2007年からの江戸川区「まちづくり基本構想」によって、小岩駅の北口および南口では総面積21.6ヘクタールに及ぶ駅前再開発が着々と進行中だ。すでに南口には29階建ての再開発ビルが竣工したが、今後28年までに段階的に再開発が行われ、北口でもタワーマンションが続々竣工を予定している。駅前には広くて使いやすい広場も整備される予定で、この街はがらりとその佇まいを変容させることになるのだ。

マンションの販売予定価格を見ても、都心へのアクセスがよい割に坪当たり200万円台前半から半ば程度とリーズナブルだ。今の働き世代は多くが夫婦共働き。都心へのアクセスが抜群で、今後街としての機能が順次整備されていく予定のこの街は非常に魅力的に映るというわけだ。

小岩駅南口の「昭和通り商店街」。文字どおり昭和の風情が残る商店街である(photolibrary)

犯罪発生件数は激減 子育てに手厚いと好評

一方で懸念されるのは、子育てをするうえでこの街がきちんとサポートしてくれるかということだ。また治安が悪ければ、どんなに都心に近いといっても住宅選びには慎重にならざるをえない。

とはいえ、この点についてもあまり心配はいらないようだ。江戸川区は最近犯罪発生件数が激減している。区や警視庁のデータによれば、02~17年の15年間で、犯罪発生件数は1万1899件(67%)減少している。

また区では「乳児養育手当」というユニークな子育て支援制度を実施しており、ゼロ歳児がいる家庭には月額1万3000円の補助金を支給している。子ども医療費の助成制度や私立幼稚園通園の補助制度なども導入し、「子育てに手厚い区」として働き世代からの好感度を上げている。

街に若い人々を呼び込み、新陳代謝を促そうという小岩の取り組みは大いに評価される。だが計画的に流入してくる新住民と、下町で育ってきた旧住民とが一緒に暮らしていくのは、これからが本番だ。下町情緒が残り、物価が安いことが売り物の商店街がはたして新住民のハートをとらえることができるだろうか。街にそびえ立つコンクリート造りのタワーマンションと旧市街の間には、意外と見えない壁がないだろうか。今後の街の発展に注目したい。

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