『マーガレット・サッチャー』を書いた冨田浩司氏に聞く 「知的真摯さで共感を得て、業績はチャーチル以上」

✎ 1〜 ✎ 188 ✎ 189 ✎ 190 ✎ 最新
拡大
縮小

『危機の指導者 チャーチル』に続き、現役外交官が評伝の対象に選んだ政治家は、チャーチルとは異質の「鉄の女」サッチャー元英首相(在任1979〜90年)。中沢孝夫・兵庫県立大学客員教授がその魅力を聞く。

マーガレット・サッチャー: 政治を変えた「鉄の女」 (新潮選書)
マーガレット・サッチャー: 政治を変えた「鉄の女」(冨田浩司 著/新潮選書/1400円+税/302ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──サッチャーの行ったことに関し、概念化された、適切な表現が多々書かれていますが、彼女自体はあまり好きになれない?

苦手でしたね。チャーチルには読者に伝えたい話が山ほどあるが、彼女にはそうした人間的共感が持てなかった。それでも、サッチャーは労働党による企業国有化の果てに停滞していた英国を、個人と国家の境界線を引き直し、資源配分のあり方そのものを変えることで復活させた。成し遂げたことはチャーチル以上で、英国のみならず世界的にも名をとどめてしかるべき政治家だと今は思う。

──内政では、政治的かつ戦闘的だった炭鉱労組(NUM)のストに対峙し勝利したのが大きかった。

労働党の基盤を弱めようという意図もあったと思うが、彼女は組合否定ではない。組合幹部の特権濫用や勤労を神聖視する彼女の価値観などと相いれない点で、NUMに対し強い決意があった。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内