経済産業省の若手チームの提言『不安な個人、立ちすくむ国家』が話題になったのは、昨年のことだった。目新しい内容はさほどないといった批判はあるにせよ、以後しだいに形を取り始めたのは、未来学的な政策提言や分析である。後者の分析は人口減によるコミュニティの崩壊、危機的な国家債務に耐え切れず財政破綻といった悲観論に彩られている。片や政策提言は、危機的状況にどこかしら突破口を求めるという方針があるためだろうが、エンパワーされるような論調である。
そうした流れの中、総務省が昨年秋に組織した「自治体戦略2040構想研究会」は、6月末に第2次報告書を提出した。2040年という団塊ジュニア世代が高齢者となる本格的少子高齢化の時代を見据え、現在必要な措置は何か検討するものだ。以後、ここでテーマとなった「スマート自治体」をめぐる自治体関連の情報産業についてさまざまな議論が展開されている。
未来社会のあり方をめぐって、本格的な分析と政策論争が起こりつつあるのが昨今の特徴である。これを「未来評論」と呼んでみたい。そもそもこうした未来評論の先駆的作品はSFであった。そして1990年代の諸改革では、地方分権改革での「地方分権型社会」、男女共同参画ビジョンで提示された「男女共同参画型社会」といった未来社会像が提示されていた。だが、現在の未来評論との違いは、これらはある種の政策や社会変動の「帰結」を描くものであった点にある。他方、未来評論では、政策の前提ないしは変えるべき対象として、未来社会が描かれる点に特徴がある。
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