はまや・ひでひろ●防衛法学会副理事長。1949年生まれ。国士舘大学教授、松阪大学教授、同大学図書館長、同大学大学院研究科長などを歴任。専攻は憲法、比較憲法、防衛法。
一時的な私権制限や人権制約の必要性を説く
評者 東洋英和女学院大学客員教授 中岡 望
現代社会にはさまざまなリスクが存在し、私たちは、日々、そうしたリスクに対応しながら生活していかなければならない。地震などの自然災害だけでなく、最近は核の脅威やテロなどのリスクも高まっている。だが、著者らは、こうしたリスクに対して「わが国の危機管理」は、国家レベルでも、個人レベルでもうまく機能していないと指摘する。
その理由として「日本は、重大な海外からの侵略・占領を受けた経験が少なかったので、身の回りの危機を感じないで生きてきた。その結果が、日本の危機管理の手立てを非常に緩慢なものにしてきた」と指摘。また危機管理を理解するためには「リスク」と「クライシス」の語義の違いを理解する必要があると説く。
さらに国民の間に「危機管理という名目で個人の自由・権利を束縛することに消極的な発想が強く、国民全体のために何をなすべきかというより、個人生活のルール・個人裁量・権利・自由を拘束されることを嫌う個人主義的・利己的な発想が強い」ため、危機管理の法制や機構作りが難しいと主張する。
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