有料会員限定

『なぜ戦略の落とし穴にはまるのか』 『クラウゼヴィッツ語録』ほか

✎ 1〜 ✎ 146 ✎ 147 ✎ 148 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
なぜ戦略の落とし穴にはまるのか
なぜ戦略の落とし穴にはまるのか(伊丹敬之 著/日本経済新聞出版社/1700円+税/226ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
いたみ・ひろゆき●国際大学学長、一橋大学名誉教授。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。米カーネギーメロン大学経営大学院でPh.D.取得。一橋大学商学部教授、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授を経て、2017年9月から現職。

人間性弱説に配慮した戦略構築の方法論

評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫

「伊丹ワールド」全開の書である。「落とし穴」にはまらない戦略をたてる方法論を、さまざまな事例を通して、わかりやすく説明している。

まず、陥りやすい落とし穴(失敗)へ歩む思考回路。視野の狭さや自分の都合による、見えにくい、あるいは見たくない「不都合な真実」からの回避。段階を追った流れの設計の不在。その結果、失敗する「戦略」の数々。

たとえば自分の強さを見失うこと。繰り返されるM&A(企業の合併・買収)の失敗。半導体産業の戦略ミス……。著者が指摘する、現場の必死の努力による成果を台無しにしてしまう経営がなぜかくも多いのか。

むろん言うは易く、行うは難いものだろう。しかし経営(者)はつねに明日を考慮し、企業という船を危うき場所に導かないことが義務であろう。そのためにこの「伊丹経営学」は、易しい事例と言葉で、丁寧に戦略構築の方法を述べている。

順をおって本書の言葉を辿(たど)ってみよう。「戦略とは『いまだあらざる姿』へ向かっての、構想である」。そして「『夢を冷静に見られる人』だけが真の戦略家である」という。さらにビジョンは言葉の貧しい人には描けない、と著者は語る。確かにそうだ。よい経営者は説明する力(言葉)を持っている。

関連記事
トピックボードAD