先進国、新興国に重要な教訓を示唆
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
1950年前後から70年代前半まで、かつてない高成長が先進各国で観測された。フランス人は「栄光の30年」、イギリス人は「黄金時代」、ドイツ人は「経済の奇跡」と呼んだ。最も高い成長を経験した日本人は、控え目に「高度成長期」と名付けた。高成長は73年に突然終わりを告げ、各国とも高成長を取り戻そうと、需要刺激や規制緩和など、ありとあらゆる政策が70年代、80年代に試みられる。
本書は、戦後の高成長がむしろ例外で、各国の成長率が低下したのは常態に戻ったからだと論じる。信頼の厚い熟練の経済ジャーナリストが優れた戦後世界経済史を著した。
戦争で破壊された資本の再蓄積、低生産性部門から高生産性部門への労働移動、大戦下で実用された軍事技術の民生移転、戦後のベビーブームによる人口増など、様々な要因が重なり、例外的な高成長時代が訪れた。
しかし、20年以上も続くと、皆それが常態と考える。高成長の継続を前提に、大幅な財政赤字をもたらす大盤振る舞いの社会保障制度を各国が構築したのもこの頃だ。高成長の終焉にもかかわらず、一時的な落ち込みと誤認し、各国は追加財政や金融緩和を繰り返す。70年代に世界的な高インフレが訪れたのは、オイルショックの到来だけが原因ではなく、無理な刺激策を各国が続けたからだ。
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