慎重な介入主義こそ平和維持活動の本質
評者 東洋英和女学院大学客員教授 中岡 望
第2次世界大戦が終わって70年以上経つ。しかし、依然として世界平和の実現は遠い。著者は「国家間の戦争を阻止する目的で作られた国連には、不安定な国家の根深い問題に対処する姿勢が整っていない」と、国連が直面する課題を指摘する。国連の課題は、破綻国家や失敗国家の内乱や虐殺行為にどう対処するかに移っている。その課題に取り組んでいるのが国連平和維持活動局である。著者は2000年から8年間、担当事務次長の職にあった。
本書は、著者が在職期間中に書きためた18冊のノートを元に書かれたものである。本書の最大の特徴は、「特殊な状況の詳細に基づかなければ、一般的な教訓に妥当性はない」との確信から、平和維持活動に関する「あるとあらゆる不確実な物事、欠点、誤った期待、間違った推測、不要な恐怖、実際の行動の不透明さ」を余すところなく読者に伝えているところだ。
本書は二つの部分から構成されている。平和維持活動に関する著者の考察と、グルジア、スーダン、レバノンなどで行われた平和維持活動の詳細な記述である。それぞれ非常に興味深い内容になっており、読者は関心に応じて読み分けることができる。
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