いわさき・まさひろ●日本大学法学部教授。1965年生まれ。東海大学大学院政治学研究科博士課程後期修了。著書に『比較政治学入門』『日本の政策課題』などがある。
理論を援用しつつ最新動向を詳細に点検
評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫
政治とはつまるところ「決定」であるのだが、問われるのは決定にいたるプロセスだ。選挙によって調達された民意を基盤として進められる議会制民主主義は、議会以外のカウンター・デモクラシーを無視できない。たとえば、本書でも論じられているが、「憲法改正」は、自民党の悲願であり、安倍晋三内閣の重要テーマではあっても、具体的な政治過程にのせられないのは、議会では調達しきれない民意が存在するからである。
本書は日本の民主主義の「質」に関して、原発、安保法制、沖縄基地問題、憲法、有権者の投票行動などをめぐるデモ、集会などの大衆行動を中心としたカウンター・デモクラシーと絡めて、10人の論者が、内外の理論を援用しつつ、その動向を詳細に点検している。
たとえば清泉女子大学准教授の山本達也氏は、政治的対立軸が、「右か左か」ではなく「上か下か」になりつつあると指摘しながら、「民主主義の不況」から「大恐慌」への移行を危ぶむ。それはソーシャルメディアの普及と重なる。たしかにかつての“東欧の春”や“中東の春”は、情報化の進展がもたらした、圧政からの解放である。しかし「情報」が圧政を代替するよい制度をつくれるわけではない。情報は「品質管理」も「製造物責任」も負わない。
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