社長・中川淳への取材でこの店の不思議を読み解く5つのキーワードが浮かび上がった。
Keyword1 花ふきん
元は30センチメートル角の蚊帳生地を8枚重ねたふきんを作っていた。吸水性は抜群だが、いかんせん乾きが悪い。そこで21年前、社長・中川淳の母親が発案し、倍の約60センチメートル角の2枚重ねに改良したところ大ヒットした。
広げればすしおけにかぶせられ、何かを包んで絞ったり、洗い物の水切りとして敷いたりするのにちょうどいい。畳んで使えば吸水性もしっかりある。アルミサッシの登場で蚊帳としての用途が激減していた地元特産品に新たな用途を見いだした点が評価され、2008年にグッドデザイン賞金賞を受賞する。これが中川に大きな自信をつけた。
花ふきんは今も中川政七商店の看板商品で、売り上げの1割を占める。1枚756円と決して安くはないが、人からもらって、使ってみてよかったから人へあげて、という輪が広がり続けてきた。「手渡すときに会話の生まれる商品が、いい商品だと思う。このふきんはね、こうこうこうで、こうなんだよ、と」。商品背景、物語性とも言い換えられるだろう。
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