女性客を魅了してやまない「和の生活雑貨店」が中川政七商店である。創業300年の老舗なのにどことなくさわやか。異彩を放つ和の空間を徹底解剖する。
のちに「くまモン」を生み出すクリエーティブディレクター、水野学の元に奈良県の中小企業から一通のメールが届いたのは2007年のことだ。「弊社ブランド、遊中川が25周年を迎えるに当たりCI(コーポレートアイデンティティ)の再構築を考えており、ぜひ一度お会いしたい」。
メールの差出人は中川政七商店の中川淳。創業300年に迫る老舗で、麻生地を使った生活雑貨の製造や小売りを主業にしていた。その13代目社長に就任する予定の人物が中川だった。打てば響くような頭の回転の速さ、思考の柔軟性が目を引いた。それでいて、食事中でもポイントをすぐにノートに書き留めるようなきまじめさを持っている。日頃付き合いのある経営者たちとは少し違う男だと感じた。
数回重ねた商談の席で水野はこう切り出す。「今のままでは年商40億円程度が限界でしょうね。それなら、こんな店を新しく始めるのはどうでしょうか」。水野が手にしているのは、政七の「七」や2体の鹿をデザインの中心に据えたロゴマーク。和の生活雑貨を扱う新業態・中川政七商店立ち上げの提案だった。
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