中川淳さんに最初にお会いしたときは、麻織物の「遊 中川」のロゴを変えてほしいとおっしゃっていたが、僕は気にならなかった。ただ、「このままだと年商40億円で終わってしまいますよ」と。非常によい感性を持っていて、それにとどまる人ではないと思ったからです。
お節介だけど、和の生活雑貨店である中川政七商店という新業態を提案した。「昔に戻しましょう」と言って、勝手にロゴも作ってね。イメージは300年前。もし僕が300年前に中川さんから仕事を受けていたら、どうしたのかなあと考えを巡らせた。春日大社があって、宝物殿もあったはずです。調べてみると、春日大社の宝物殿に掛け軸があって、そこに鹿がいた。奈良県の会社は春日大社の意匠を使っていいらしいので、その鹿を借りました。
肉が焼ける音、ビールの泡。広告業界でいう「シズル」は「らしさ」でもあるのですが、中川政七商店にとっては和、奈良、麻がシズルでした。
僕はクライアントにはいつも「新しいことをやりましょう」ではなく、「元に戻しましょう」と話す。どんなに格好よくても、かわいくても、似合わないモノを着せてはいけないというのがポリシーなので。中川政七商店のロゴにある「七」も「麻もの」も特別なデザインは何一つなく、全部自分たちの持ち物ですよ。
西洋の暮らしに傾いていた世の中の嗜好が1990年代の終わりごろから和のほうへ移ってきましたが、当時は和の雑貨店はなかった。「和の無印良品」を作れば面白いだろうなと思っていたんです。
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