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日本には環境問題など存在しない 環境は宗教から科学へ

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京都議定書締結から10年。環境問題は、今や国際政治の中心課題になった。その背後にある大国間の覇権争いの本質とは? 

環境問題を考える場合のキーワードは、エネルギー問題と食料問題の二つだ。とうもろこしを原料とするバイオ燃料というものをアメリカのブッシュ政権が強く打ち出してきた狙いは、まさにこの両方に焦点を当てた政策といえる。世界的にみて極端に不足している食料をエネルギーとリンクさせて押さえることで、アメリカは軍事、政治、金融に加え、食料、エネルギーという五つの重要な部分をがっちりと押さえようとしている。

中部大学教授 武田 邦彦
1943年東京都生まれ、東京大学教養学部卒。現在、中部大学総合工学研究所教授。原子力安全委員会専門委員を務める。『リサイクル幻想』(文春新書)など著書多数。

エネルギー問題、食料問題は実在する。しかし、環境問題はあくまで政治的なものだ。環境先進国といわれるドイツは自国内産業保護を目的に環境政策を打つ。たとえば飲料を再利用可能なビンに制限して周辺諸国からの輸入を制限する。EU経済圏には関税障壁はないが、環境がその役割をしている。まず日本人はこのことを認識する必要がある。

アル・ゴアの『不都合な真実』も、日本では誤解して伝わっているように思う。あの本のポイントは、世界の60%の二酸化炭素をアメリカとヨーロッパが出している点、そしてグリーンランドの氷の半分が一気に海中に滑り落ちると大変なことになるという点だ。大量の氷がいっぺんに溶けると、メキシコ暖流に変化が生じヨーロッパは亜寒帯になる。そして一度に海面が上がれば対策が間に合わず、マンハッタンが沈んでしまうというシナリオだ。

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