さまざまな事情で子どもがいない夫婦たち。少子化対策が叫ばれる中、肩身の狭い思いをして生きている。
持ちたくても持てない 「子なし」夫婦の苦悩
子どもがいないと、貧乏くじを引いてしまう。東京都内の私立大学で教員として働く山本健二さん(仮名・41)は、そんなふうに感じることが多い。同僚の教員が子どもの入学式や授業参観、運動会などのイベントに出るため、休日の出勤を頼まれることが多いからだ。
「子どもがすでに大きい男性の同僚もいるのですが、仕事を頼みやすいのは子どもがいない私。頼んだ本人に申し訳なさそうに謝られるのはもっとつらい」
大学はハラスメント行為に当たる言動を厳しく取り締まっており、子どもがいないことによる、あからさまな嫌がらせを感じることはほぼない。が、山本さんにはある記憶が鮮明に残っている。
10年ほど前、まだ独身だったときに指導教授から「子どもを育ててこそ、いい教育者になれる」「自分の子どもを観察できると、論文の内容が変わる」と諭された。今もこうした考えが教育現場に根強くあると感じる。今では面と向かって言われることはなくなった。それでもあらゆる場面で「子どもがいないこと」を認識させられ、言いようのない不安に襲われることがある。
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