子どもを持たない選択は、老後の暮らしも大きく変える。子どもがいないシニアはどう過ごし、何を思うのか。
神奈川県川崎市に住む野崎郁子さん(仮名・68)は高校卒業後、18歳で化学メーカーに入社した。
取引先で出会った夫と21歳で結婚。25歳ごろまで働き、周りの同僚と同じように、子どもができたら退職しよう。そう考えていた。
しかし25歳を過ぎても子どもができない。病院に行くと、妊娠しにくい体だと告げられた。2年間の不妊治療を受け、ようやく妊娠。しかし疲労がたたり流産してしまう。
仕事を休み、安静にすれば再び妊娠できる可能性がある。医者からはそう告げられたが、ちょうど仕事が楽しくなってきたところだった。
事務職から営業の現場に移り、地方へ出張に飛ぶ毎日。まだ女性には珍しかった名刺を持てたことを誇らしくも感じた。「仕事はやはり辞めたくない」。そう思い、目の前の仕事に精を出すうち、月日が流れた。
30歳を前に夫が病院に行くと、不妊体質が判明した。夫婦での治療は負担が大きい。二人で相談し、「私たちには縁がなかった」と、子どもを持たない人生を受け入れた。
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